日経平均の11日の600円高は、米国発と国内発の好材料がきっかけとなりました。どちらの要因が強く作用したかは検証しようがないですが、筆者の感覚からいくと、米国発が70%、国内発が30%といったところでしょうか。米国発とはご存知の通り、8日に発表された米6月雇用統計で非農業部門雇用者数が28.7万人と大幅に伸びたことが、米景気への安心材料になったことです。そして、国内発としては参議院選挙での与党勝利が援軍になりました。参議院選挙は予想されていた結果とさほど大きく違わなかったのですが、米国発の材料ですでに強気になっていたため、与党勝利が大量の売りポジションを抱えていた売り方の焦りを強くしたものと思われます。
米国発が70%とした理由のなかには、ダウ平均の18,000ドル台回復が何よりも大きかったわけです。ダウ平均は4月以降ボックス相場でした。テクニカル分析を多用するヘッジファンドなどが18,000ドル回復によって、「Brexit(ブリグジット)」による急落が「ダマシ」だったことを確信し、米国株に連動性が高くて値ごろ感のある日本株を買い戻さざるを得なかった、ということなのでしょう。
米国市場では、S&P500が昨年5月につけた史上最高値を更新。ダウ平均も続いて史上最高値を更新しました。両者にあてはまることなのですが、S&P500でいうと6月27日の直近安値を起点に7月11日までの9日間で136ポイント上昇しました。9日間でこんなに上昇したことは最近ではなく、2008年以降では最短記録です。図表で示したように、2014年以降、9日間で120P以上上昇したのは3局面(水準が共通)ありました。いずれもその後上昇が続いたわけです。現在は3局面と水準が異なるため、同じように上昇が続くかどうかはわかりませんが、新しい水準で上値の抵抗なく出現した値幅という意味では、上方向を指す中期的な買いサインとみることができます。今年2月安値からの上昇では、NYSEの騰落銘柄でみると値下がり銘柄よりも値上がり銘柄が特に多く、中身がともなっている点にも注目したいところです。
一方、短期的には高値警戒です。今年の上昇幅が広がってきたことや、短期的には200日線からの上方かい離が意識されやすい。昨年後半の株価の乱高下が短期的な200日線の傾きを不安定にさせる可能性があります。つまり、足元の200日線の上昇は200日前が昨年8月急落後の水準で今よりも安いからこそ実現しやすい。しかし、しばらくすると200日前が同じ水準に上昇してくる可能性が高く、200日線の上昇が止まりかねない。そうなると、株価とのかい離率の広がりが上値を抑える要因になりやすいのです。200日線が上昇している間は株価が上昇しても両者のかい離拡大は比較的緩やかですが、200日線が止まるとかい離が広がるため株価の上昇も止まる、という理屈です。過去の値動きが将来を左右する一例になるかもしれません。あと3カ月程度たてば、再び200日線の上昇が鮮明になるときがくるかもしれません。
また、4月に「ミニデカップリングか?」でご案内いたしましたが、米非鉄大手アルコアの決算から20日間の株価をみると、4-6月決算が発表される7月の株価はさえない傾向があることがわかります。
先週取り上げた、ダウ平均と輸送株指数の動きが逆になっていることからもいえることで、高値更新が続くという環境ではないかもしれません。
米国の利上げの方向性がみえてくる、欧州株がバランスを立て直す、日本株は円高による企業業績の下方修正が許せる範囲で織り込める状況になっていく、そういった意味では長くても3カ月ぐらいの時間稼ぎは必要な気がします。
東野幸利
株式会社DZHフィナンシャルリサーチ
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