来週28日に向けては、3月本決算銘柄への権利・配当取り目的の駆け込み買いの発生が予想されます。と同時に、この時期になると話題になるし、筆者も毎回話題にするのが「配当再投資の買い」です。「配当再投資の買い」とは、TOPIX(東証株価指数)をベンチマークに年金資金などを運用・管理する信託銀行が、運用ポートフォリオに占める株式資産の配当落ちによる目減りを補うため(連続性を保つため)に買いを入れることです。配当金を実際受け取るのは2~3カ月あとになるため、例えば権利付き最終日(今年は3月28日)の大引けにかけて先物に機械的な買いを入れるケースが考えられます。
 世の中にTOPIXに連動する資産がどれぐらいあるかで試算値は変わりますが、今年は2,400億円(先物換算で18,000枚程度)程度の買い需要があると思います。ちなみに、2014年の3月最終週の信託銀行のTOPIX先物の手口は2,595億円の買い越し、2015年の3月最終週は2,845億円の買い越しでした。下落局面では一時的な下支えにしかならないケースが多いですが、足元のようにもみ合い局面では、決して無視できないインパクトと考えてもよさそうです。
 4月以降は、海外投資家の動向がポイントとなります。海外投資家は3月第2週の1週間だけで日本株を1兆2,990億円(先物・現物合算)売り越したのです。3月第2週までで10週連続して日本株を売り続け、その間の売り越し額は4兆8,448億円にまで膨らみました。ただ、特殊要因を除き、週間ベースでは次第に売り越し額が減少傾向にあります。また、直近3年間でみると4月第1週には日本株への買い越し額が膨らむ傾向もあるようで、今年も4月第1週前後には買い越しに転じる可能性が高い、といえなくもない。
 あすの投資戦略としては、株価一段高を見据えた指数連動商品への買い付けのほか、これまでの海外勢の売り越しの主犯格であった産油国ファンドやノルウェー年金基金などのSWF(政府系ファンド)が保有している、と推測される銘柄(3月12日の日経新聞に掲載されていました)への先回り買いなどはありでしょう。

 最近の話題からです。今年1月1日時点の公示地価は、全国平均(全用途)が8年ぶりにプラス転換したそうです。特に商業地の上昇が顕著で、東京、大阪、名古屋の三大都市だけでなく、札幌、仙台、広島、福岡の地方圏も大きく伸長。マイナス金利の導入もあり、不動産売買は一段の活況が期待できそう。不動産ファンド運営のケネディクス(4321)の株価は、2013年高値を起点とするもち合い相場が煮詰まり気味。不動産流動化のいちごHD(2337)は月足上では好位置をキープしている。そのほか、スターマイカ(3230)、インテリックス(8940)、サムティ(3244)などに注目か。

 3月24日付けの日経新聞朝刊の一面に、三井物産(8031)や三菱商事(8058)が資源安を背景に今期減損損失で最終赤字になる見通しと報じていました。この記事をみてどのような投資戦略が頭に浮かぶでしょうか? 少し前に住友商事の件もあったし、これはある程度わかっていたこと。だからこの記事を見て瞬間的に売られるだろうけど買い場になるのでは、と思われた方がたくさんいると思います。三菱商事について、チャート上では三尊底(トリプルボトム)を形成したあとの揺り戻しと判断できれば、今日の記事で売られたところは買い、となります。仮に、もっと下げて2月12日安値(1,565円)を起点とした上昇に対しての深押しがあったとしても、二番底を形成する典型的な現象(弱気派が再び自信を取り戻す局面、ファンダメンタルズが弱いことに変わりなく、マスコミの論調も弱気。だが、上昇初期の下値固めとなるケースが多い)とみられ、押し目買いで対応したいところです。

 最後に、任天堂(7974「なくなよ」)です。私が2007年から9年ほど担当させていただいた日経CNBCのチャート分析への出演が23日で終了しました。最後の分析となったのが任天堂だったのですが、日足チャートでは少し珍しいパターンになっています。だから取り上げたのですが。珍しいというのは、2月23日高値から長方形の動きでもみ合いが続いていることです。レクタングルパターンといいます。ポイントは長方形の中の下げの動きです。具体的には、2月23日高値(16,770円)~3月1日安値(15,060円)まで1,710円の下落、3月7日高値(16,750円)~3月18日安値(15,110円)まで1,640円下落しました。
 もし、3月23日高値(16,790円)からこれまでと同じような値幅を下げるとあまり強くないですが、半分程度(820円~850円)までの下げにとどまれば、レクタングルを上抜ける前兆となります。そして、上値の壁(16,750円~16,790円)を超えると、みんなの目がまた向きますよ。
 テクニカル分析で売買タイミングを先取りしましょう。
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東野 幸利
株式会社DZHフィナンシャルリサーチ

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