国内の長期金利の低下が著しく、2月9日には10年国債利回りが初のマイナス圏に低下しました。その過程で株式の配当利回りと長期金利の差が大きく開いています。
図表は、TOPIX(東証株価指数)の配当利回りから10年国債利回りを差し引いたものと、TOPIXの推移を示したもので、株式と債券の相対的な魅力度をみることができます。青のラインが上昇するほど株式が有利、低下するほど株式が不利と判断します。利回り差は12日時点で2.36%まで拡大しました。2007年以降、リーマンショック(世界的な金融危機)直後にも両者の差が広がる場面がありましたが、その当時のピークは1.94%(2009/3/6)。TOPIXの安値(721.39P)も同じ週でした。
アベノミクス相場が始まる前にも両者の差が広がる場面があったのですが、その時はリーマンショック時の水準がバロメータになりました。2012年10月に1.88%(2012/10/12)まで拡大し、株価もそのタイミングで当時の安値を付けています。これまで約3年4カ月続いているアベノミクス相場が始まる起点になった安値ですね。アベノミクス相場はかなり壮大な上昇相場に発展しましたが、それ以前に上昇しやすい下地ができていたということです。
現在はその水準を超えるほど株式の相対的な魅力が高まっているということで、きっかけ次第では株価の急反発が見込める環境にあります。15日の日経平均の1,000円高はまさにその現象です。3月の本決算前に文句なしの買い場到来かもしれません。
17日付け日経新聞朝刊では、2015年度に上場企業が予定している配当総額が約10兆8,000億円と、3年連続で過去最高を更新すると報じていました。また、業績見通しを下方修正した企業でも、その約9割が従来計画通りの配当を維持する見込みだそうです。
投資家から株主還元意識の強化が要求される最近の傾向から考えても、増益幅が少し減ったからといって還元策を緩めるわけにはいかない、と筆者も思います。減配リスクはほぼ無いといえるかもしれません。

20160218_DZH_graph_1.jpg

日銀による「マイナス金利」導入によって、銀行の預金金利が引き下げられています。MMFなども運用難から資金を投資家に返還する動きが出ています。国債利回りの急低下で金融機関などはますます運用難に陥る可能性が高い。地方銀行の再編だって、あとになってみれば、「マイナス金利」導入が大きなきっかけになった、といえるときがくるかもしれません。
そんな状況下、中長期的には銀行のリスク資産に対する考え方に変化が生じる可能性が高いとみています。リスク資産では、J-REIT(不動産投資信託)に加え、一部ではETF(上場投資信託)を購入する動きも出始めていいますが、持ち合い株式の放出後の運用先とあわせ、リスク資産の運用範囲を現物株に広げる動きがでてきてもおかしくありません。
相場全体は当面、大きな方向感が出づらいでしょうが、余剰運用資金は高配当利回り、低PBR(株価純資産倍率)、高ROE(自己資本利益率)、ガバナンス意識の強い企業の株式を探し始めるのではないでしょうか。

東野幸利

株式会社DZHフィナンシャルリサーチ

「トレーダーズ・プレミアム」は、個人投資家の心強い味方です!!

(DZHフィナンシャルリサーチのウェブサイトに遷移します。)