相場の上昇局面でも思ったほど信用買い残が増えない。ネット取引が主流になる前までは、相場の上昇局面では買い残は目立って増加する傾向にあり、大幅に買いに傾くといずれ高値圏で需給は悪化する。次の押し目の局面では、それまでの上昇相場につけなかった資金が押し目を拾うために大きく下げない。ただ、その後の戻りは鈍く、押し目を拾った買い方は利食えず、結局は二番天井で信用買い残が最も多くなりやすい、といったケースは珍しくありません。
ネット取引ブームの初期は、まだそのような傾向が見られたように思いますが、リーマンショック以降、日経225ミニが人気化したのと平行して、現物株でも売りからポジションを持つ投資家が増えたのは確かでしょう。
その下げ相場の投資家の教訓が価格形成上、良い効果になっているような・・・、
上昇相場が長持ちするようになった気がします。
「安ければ買い、高くなっても買い」、であった投資のスタンスが、「安くなったら買い、高くなったら売り」、といった相場ものの当然の心構えが実際の取引でも実行されるようになってきた。しかも、短期狙いで・・・。
そのおかげで、上昇相場では、買い方の利益確定売り、売り方の買い戻し、新規売りなど。上昇相場の押し目の局面では、新規買いや売り方の適度の買い戻しが入る。売りを吸収する格好で買いが続くため、相場は長持ちしやすい。逆に、下落相場では、売り方の買い戻し、買い方の見切り売り、新規買いなど。そのアヤ戻しの局面では、新規売りと買い方の戻り売りが強くなる。
今の材料株の上昇が意外と長持ちするのもそういった要因があるかもしれません。いや、そうでしょう。やや崩れたように見えても、この程度だとまだわかりません。1995年~1996年に賑わった兼松日産農林なんかは、600円ぐらいから5210円まで上昇する途中で1700円ぐらいの調整幅がありましたからね・・・何があるかわかりません。

私を含めて昔の証券営業マンは、「株というものは買うもの」と先輩に教わりました。投資家の信用取引も新規売りはまったく無いに等しい状況で新規買いばかり。しかも、下がれば押し目買いで信用枠いっぱい買ってしまうので、評価損を抱えてしまうと6ヶ月期日を待つのみだったのです。売買すると当時は手数料も今と比べて高かったので、損失覚悟に加えて手数料がかかるとなると、なかなか売れずに持ってしまう・・・そういった状態がほとんどでした。これでは市場での資金回転が鈍くなり、出来高は低迷、相場は下落続きですよね。でも、今は売りを覚えた投資家が多く、相場のバランスが違います。

最後に話しは変わりますが、今はネット取引が主流。証券営業マンと投資家の接点はかなり減ったと思います。証券会社は株式だけを販売しているわけではないのですが、その分、証券営業マンの株式離れが気になるところです。一方、投資家の方は株式の知識はかなり向上しているように思います。先物・オプションなどの知識も含めて・・・。投資家に投資情報を提供する仕事に携わっていると、その辺よく感じます。
「若手社員の株に対する執着心があまりにも無さすぎる・・・」と、営業店のマネージャーが口を揃えていいます。そういったことを聞きますと、証券営業マンを株のプロといえなくなる時代も近いのかな~とも思いますが、一方で、知識に偏りのない、いろんな金融知識を備えた証券金融マンが育つような気がしますし、将来「重宝」されるようになると思います。

東野幸利
株式会社T&Cフィナンシャルリサーチ

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