先週3日に発表された米3月雇用統計の結果を受けて、一時119円割れの水準まで下押していたドル/円ですが、一昨日(6日)のNY時間あたりから俄かに反発・上昇の勢いが強まりはじめ、昨日(7日)は一時120.45円までの戻りを見る場面がありました。
市場関係者の間からは「3月はすでに過去のもの」、「雇用統計の結果は早々に消化してしまいたい」などといった声も上がっていますが、本欄の前回更新分でも述べたように、もともと米雇用統計のヘッドラインの数値など「あくまで利上げ判断における一つの参考程度に過ぎないもの」と考えるのがより適切なのではないでしょうか。
よって、その結果が芳しいものでなかったとしてもドルの下値は自ずと限られるわけであり、昨日までの戻りはさほど不思議なことでもありません。とはいえ、下図においても確認できるように、いまだドル/円の上値は21日移動平均線(21日線)に押さえられる格好となっており、同時に今年1月半ばから形成されていた上昇チャネルの下辺も目先の上値抵抗として意識されやすくなっている模様です。
一方、下値の方は今のところ89日移動平均線(89日線)に支えられており、結局は21日線と89日線との間の狭い範囲でのもみ合いとなっています。この89日線のすぐ下方には一目均衡表の日足「雲」も控えており、これも目先の下値サポートとして機能しているようですが、今後の指標結果や要人発言の内容によっては、この日足「雲」を下抜けて一つの節目として意識されやすい117.00円前後の水準まで調整することがあっても、何ら不思議ではないものと思われます。
今後、仮に117円前後までの調整があったとしても、昨年12月以降の値動きを"鳥の眼"でみれば概ね横ばいです。よく言えば、安定した好ましい状態ということにもなるのでしょうが、果たしてこうした状態はいつごろまで続くものなのでしょうか。
当然のことながら、相場がある程度限られた値幅のなかで中期的に推移し続けると、いずれその値動きは中期的な移動平均線との距離を縮め、しばらくはその移動平均線と交錯し合う状態を続けます。そこで見られる現象が、ボリンジャ―バンドの「収束」という動きです。周知のとおり、ボリンジャ―バンドは特定の期間を元にした移動平均線に対して相場が上下に振れた「程度」を帯のようなもの=バンドによって表すもので、上図(小窓)では31週移動平均線(31週線)を元にしたバンドの動きを示しています。
注目しておきたいのは、このバンドの幅が常に「収束」したり「拡散」したりする動きを繰り返していることと、一定の収束が見られた後には決まって相場が大きく動いている(上図では上昇している)ということです。これは、ある種の「相場のクセ」と言ってもいいものと思われ、そのクセを知っておくことで今後の中期的な展開の想定に役立てるというのはとても大事なことです。
近過去においてバンドの収束が見られたのは昨年8月頃のことで、以降は一旦拡散し、現在は再び徐々に収束に向かっています。このバンド幅が一段と収束するまでには、まだ一定の時間を要し、その間は基本的にもみ合いの状態が続きやすいものと思われます。もちろん、その間に次の大きな変化の訪れを想定しておくことこそが重要でしょう。
コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役