先週10日に行われたバーナンキFRB議長の講演は、市場で強まっていた量的緩和(QE)の早期縮小観測を大きく後退させるものとなりました。結果、あまりにも急ピッチだった米長期金利の上昇には歯止めがかかり、目下はドル/円の上値もいささか重くなっているように感じられます。本日(17日)は、米下院金融委員会においてバーナンキFRB議長の議会証言が予定されており、市場では10日の講演内容と同じようにどちらかと言えばハト派的な証言になるとの見方が強まっています。それによって、足下で一段とドル売りの流れが強まるのかどうか、ここはしっかりと見定めておきたいところです。

なお、ドル/円は下の図にも見るように、7月8日に一目均衡表(日足)の「雲」上限を上抜け、同時に遅行線が日々線を上抜けたことにより「三役好転」の強気シグナルが点灯する格好となりました。しかし、ほどなく10日のバーナンキ講演を受けてドル売りの流れが強まったことから、ドル/円は一時的にも98.24円まで下押し、その後一旦は100円の大台を回復する場面もありましたが、再び100円を割り込んでからは徐々に上値が切り下がる格好となっています。

注目しておきたいのは、一つにドル/円が今後もしばらく上値を切り下げるような展開を続けた場合、日々線が再び一目均衡表(日足)の「雲」を下抜け、同時に遅行線が再び日々線を下抜けることで、一転して当面弱気のシグナルが点灯する可能性があるという点です。
また、足下で今まさに一目均衡表の「先行スパン1」と「先行スパン2」の位置が上下入れ替わる結果、「雲のねじれ」が生じようとしているという点にも一応は留意しておきたいものと考えます。この「ねじれ」が生じるのは昨年11月下旬以来久しぶりのことでありますし、ときとしてこの「ねじれ」は相場に重要な変化をもたらす一つのきっかけとなることもあります。

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FRBの金融政策というのは、市場に過度な影響を及ぼさないように、また無用な危機を招かぬように「押しては引いて」、「引いては押して」の繰り返しです。実際、バーナンキFRB議長は去る5月22日の議会証言と6月19日のFOMC会見では「押し」、「押し」でしたが、7月10日の講演は「引き」でした。つまり、日銀の金融政策方針に当面大きな変更がないことを前提にすると、今後のドル/円の行方は、そのかなりの部分がFRBの「押し」か「引き」によって左右されるということになるのです。

その結果として描かれるドル/円の価格推移は、本欄の6月19日更新分でも述べたとおり、5月22日高値からa-b-cの3波構成になるものと見られます。まず、5月22日高値から6月13日安値までは「a波」と見てよさそうであり、次に描かれた「b波」の戻りはもしかすると7月8日高値=101.53円で終了した可能性があります。そうであるとするならば目下は「c波」の局面にあり、いましばらくは一定の下値を試しながら、いずれ底入れ・反発して5月22日高値=103.73円を上抜けるような力強い波動=第5波の局面に入るときを待つということになりそうです。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役