あれから一週間...。そうです、野田首相が党首討論で衝撃の解散宣言をしたのは先週14日であり、前回の本欄原稿を更新・送信した数時間後のことでした。以降、相場の顔つきは一変し、いまやドル/円は82.00円台をうかがう勢い。いわゆる「安倍トレード」の威力にはすさまじいものが感じられます。

安倍自民党総裁による発言のなかには「2~3%のインフレターゲット」、「日銀による国債の直接引き受け」など少々過激なものも少なくはなく、一部の学者や政治家、市場関係者などからも様々な批判の声が上がっています。しかし、安倍発言が現実にドル/円を82.00円近辺まで、日経平均株価を9,200円台まで押し上げたことは紛れもない事実であり、そのことが最も重要と言えるでしょう。

相場の顔つきは今、様々なところで大きな変化を遂げようとしており、その一つとして注目しておきたいのがドル/円の月足ロウソクと31ヶ月移動平均線(31ヶ月線)との関係です。以下に04年1月以降の月足ロウソクの推移と31ヶ月線の図を掲げておきますので、どうぞじっくりとご覧ください。

この図をみると、まずドル/円が05年1月に101.67円の安値をつけて上昇に転じ、05年6月に月足ロウソクの「実体部分(上下のヒゲを除いた部分)」が31ヶ月線を上抜けて以来、07年6月に124円台の高値をつけるまで、一度も実体部分で31ヶ月線を下抜けていないことがわかります。思えば、当時の相場ではドル/円、クロス円の買いで大きな投資成果を挙げた「FX長者」が数多く現れたものです。

その後、ドル/円相場は07年6月高値を持って反落。07年9月には月足ロウソクの実体部分で31ヶ月線を下抜け、以降は先月(12年10月)まで長らく一度も31ヶ月線を実体部分で上抜けることはありませんでした。

ところが、ついに今月(12年11月)の月足ロウソクが久々に31ヶ月線(現在は80.86円に位置)を上抜けようとしているから、これは見逃せません。もちろん、11月が終わるまでは、あくまで可能性に過ぎませんが、仮に31ヶ月線を明確に上抜けたならば、そこから一気に上方の視界が大きく拡がってくることは、過去の事例からも明らかであると言えます。

実のところ、筆者を含めた少なからぬ市場関係者は、07年6月高値とその後の主要な高値を結んだレジスタンスライン(図中、青点線)を今年(12年)2月に上抜けた時点で、ドル/円相場の基調は円安方向に転換したとの思いをずっと抱き続けてきています。そして今、まさに目の前で月足ロウソクが31ヶ月線を明確に上抜けてきたならば、その「感触」は一段と強いものになるのです。

ちなみに、以前から本欄でも注目している週足ベースの一目均衡表における「雲」上限は、すでに先週時点で突破されています。もちろん、これも力強い強気シグナルの一つと考えることができます。