11月6日の米大統領選まで、残すところ1ヶ月余り...。4年に1度の"この時期"になると、市場関係者の間で必ず取り沙汰されるのが「米大統領選とドル/円との関係におけるアノマリー」です。

アノマリーというのは「本来、経済合理性に基づいて決定づけられると考えられる市場の価格形成において、場合により経済合理性だけでは説明しようがなく変則的でありながらも、ある意味で規則的な結果となること」とでも言えばいいでしょうか。

よく代表例として挙げられるものの一つに「米国株は5月に売って、出かけてしまえ(Sell in May and Go Away)」というものがあり、これは6月から10月にかけて米国株は値下がりしやすいので「5月に持ち株を売り払って、しばらくは株のことを忘れてしまおう」というものです。

それでは、前述した「米大統領選とドル/円との関係におけるアノマリー」とは?
それは「米大統領選が行われる年の10月―12月の間に、決まってドル/円は年間の高値・安値を付ける」というもので、実際、1980年から2008年の間に8回行われた過去の米大統領選の年は、例外なくドル/円が年間の高値・安値をつけていることがわかっています。下の図を見ても、1996年からこれまでの間に4回行われた米大統領選の年においては、いずれも例外なく10月―12月に年間の高値・安値をつけていることが確認できるでしょう。

仮に、今回の米大統領線においてもこのアノマリーが有効であるとするならば、これから12月末までの間に、ドル/円は年間の高値あるいは安値のどちらかをつけるということになります。つまり、3月15日の高値=84.17円を上回る高値をつけるか、2月1日の安値=76.02円を下回る安値をつけるかのどちらかだということです。どちらに転ぶかによって、その結果は大違いということになりますね。

ちなみに、筆者の個人的な見立ては以下の通りです。

まず、ドル/円は2012年2月1日の安値を起点として「5波構成」の強気相場を形成しており、第1波は3月15日高値までの上昇、第2波は9月13日安値までの下降、そして現在は9月13日安値を起点とする第3波がスタートしているものと見ます(本欄2012年5月23日更新分参照)。

9月13日安値が第2波の終点とする根拠は、ドル/円の過去の値動きにおいて確認できる「45―50週(安値)サイクル」(本欄2011年8月17日更新分参照)に基づいて考えた場合、2011年10月31日安値から9月13日安値までには46週が経過していることから、そこがサイクルの終点と考えていいものと思われるからです。

さて、仮に9月13日安値を起点としてドル/円が第3波の上昇相場を形成しているとして、さらに今回の米大統領選でもアノマリーが有効であるとするならば、今後のドル/円は12月末までの間に年間の高値をつける、つまり3月15日高値=84.17円を上回るということになるわけですが...。

もちろん、これはあくまでアノマリーに基づいた仮説(複数あるシナリオの一つ)に過ぎないわけですが、ちょっと頭の片隅にでも置いておいていただければと思います。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役