2012年5月18日、ついにドル/円は今年2月安値から3月高値までの上昇に対する61.8%押し=79.14円の水準に到達しました。その前日17日には、発表された5月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数が極めて軟調な結果となったことを受け、2011年10月31日に付けた高値=79.53円を下抜けてしまっています。
これらのことから言えるのは、どうやらドル/円の今年3月高値からの価格調整は「昨年10月安値を起点とする5波構成のドル強気相場において第4波にあたる」との見立ては見直しが必要と考えられるということです。本欄では、2012年4月11日更新分において前述の見立てを披露していますが、今回あえてその見立てを修正させていただきたいと思います。
テクニカル分析の教科書によれば「理論自体の完成度は高い(今回はエリオット波動理論)ものの、それを実際のマーケットにあてはめる段になると『ああも読める、こうも読める』という曖昧な場面に遭遇することも少なくない。こうしたジレンマを避けるためにメインシナリオと並行してサブシナリオを常に用意しておく柔軟性が非常に重要となる」とあります。そこで、今回はサブシナリオをご披露したいと思いますが、必ずしもサブシナリオは一つとは限らないという点もご理解いただければ幸いです。
なぜ、見直し・修正の必要が生じたのかと言いますと、何よりセオリーでは「第4波の安値が第1波の高値を下回ることは決してない」とされているからです。そして、今回は前述したように直近の安値(想定していた第4波の安値)が2011年10月高値(想定していた第1波の高値)を下抜けてしまいました。
見直し・修正後の新しいシナリオは「2012年2月安値を起点とする5波構成のドル強気相場において2012年3月高値までが第1波、3月高値からの調整が第2波とカウントする」というものです。
では、2011年10月高値から2012年2月安値までの調整(以前の想定では第2波)は一体どういう位置付けになるのかと言いますと「実のところ以前の円強気相場における第5波であったのだが、第3波の高値(ドル/円では安値)超えないフェイラー(未達成)であった」ということになるのです。このフェイラーというのは、第5波が第3波を超えることに失敗することを意味し、実施の相場のなかでは少なからず見受けられるものです。
新しいシナリオに基づいて考えますと、今年3月高値からの価格調整は第2波ということになるわけですが、セオリーによれば「第2波の長さ(値幅)は第1波の0.5000倍か0.618倍となることが多い」とされており、今回の61.8%押しのケースに符合します。
ちなみに、第2波というのは「弱気筋が再び自信を取り戻して活気づく部分」、「ファンダメンタルズが弱いことに変化はなく、ときに急落パターンを伴って、あたかも弱気トレンドが再開されたように見える」とされています。足下の状況は、まさにそんな感じですね。なお、この第2波が第1波の底を下回ることは決してありません。加えて注目されることは、第2波終了後の第3波は「その長さが第1波の1.618倍、2倍、2.618倍となることが多い、非常に強い波である」とされています。もちろん、今回の第1波というのは今年2月安値から3月高値までのことを示しています。
コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役