本欄の前々回(2012年9月12日)更新分において「ユーロの戻りは、まだ継続するのか?」という話題を取り上げました。その時点で「そろそろ反落の可能性があり要警戒ということになる」、「まだ多少の上値余地はあるものと思われるが、ここからユーロ/ドルの買いで取りに行くことには相当の慎重さが求められる」などと述べました。果たしてその後の値動きはどうなったのか、あらためて検証しておきましょう。
9月12日以降のユーロ/ドルはもう一段の上値を試し、9月17日には1.3172ドルの高値を付けるに至りました。ところが、後に下げに転じたユーロ/ドルは連日のように上値を切り下げ続け、ここ数日は1.2900ドルを幾度が下回る場面も垣間見られるレベルまでの調整を余儀なくされています。振り返れば、7月下旬のドラギ発言をきっかけとして戻りに転じたユーロ/ドル相場でしたが、さすがに9月初旬から中旬にかけての値動きには相当の過熱感が感じられるようになっていたのです。
あらためて下の図で確認しておきますと、まず前々回の更新分で指摘した通り、直近の一定期間(この場合は14日間)において「上昇」と「下落」のどちらの勢いが強いかを示すRSI(14)が一時的にも80%を超えるレベルにまで達し、明らかに「買われ過ぎ」のシグナルを発していました。また、200日移動平均線(200日線)が下向きのときに、市場価格が一時的にもそれを上抜けた場合は、そこが「売り時」となることが多いというセオリーにも当てはまっていました。
さらに、よく見ると9月17日の高値水準というのは、2011年5月高値から2012年7月安値までの下げに対する38.2%戻しの水準(計算上は1.3150ドル)に近く、ここでひとまず当面の到達感が拡がりやすくなる状況であったということも見逃せません。そして、なおもユーロ/ドル相場は2011年5月高値到達以降に形成された下降チャネル内での値動きに終始しており、9月17日高値はチャネル上限に近い水準であったということも確認することができます。
こうして見ると、やはりユーロ/ドルの値動きはテクニカル分析から得られる投資判断に比較的忠実であるということが言えるわけですが、それは決してファンダメンタルズとは無関係というわけでもありません。
ユーロ/ドルが長らく下降チャネル内での推移を続けているのも、200日線が下向きの状態を続けているのも、ひとえにスペインやギリシャを取り巻く不透明感が増しているためであり、たとえECBが無制限の国債購入方針を決めたところで、それが問題の根本的な解決に結びつかないことは誰もが知っています。
当面の行方を予想するうえで一つのカギとなるのは、今週28日にスペイン政府が改革プログラムと2013年予算、ならびに銀行のストレステストの最終結果を発表する予定となっていることです。結果、同国が支援要請に踏み切るかどうかも含め、これは一つの転機となる可能性があります。場合によっては、これでとりあえずスペイン問題に対して今でき得る"手術・治療"は終わり、あとは"経過観察"となることも考えられます。すると一旦は、再びユーロが買い戻されやすくなるかもしれません。ただ、その後にはギリシャの問題が控えているということも忘れるわけには行きません...。
コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役