依然としてユーロには強い下押し圧力がかかっています。前回の本欄(2012年1月4日更新分)でも述べた通り、この1-3月期は欧州問題が「混乱の極み」へと向かう可能性があるわけですから、これも致し方のないことでしょう。

それにしても、ユーロ/ドルは今後、一体どこまで値下がりするのでしょうか? 昨年の暮れから年明け早々にかけては、1.3000ドル前後が重要な心理的節目であり、同水準は2010年6月安値から2011年5月高値までの上げ幅に対する61.8%押しの水準(=1.3046ドル)にも近いことから、そのあたりで一旦は下げ止まるものと見る向きもありました。しかし、年明け1月5日には2011年1月安値の1.2873ドルをもあっさりと下抜け、1月9日には1.2700ドルをも割り込む場面が一時垣間見られました。

今後の下値のメドはというと、まず考えられるのは2010年8月安値=1.2587ドルということになるでしょうか。下のチャートにも示した通り、同水準は2010年6月安値から2011年5月高値までの上げ幅に対する76.4%押しの水準(=1.2600ドル)にも近いことから、このあたりで一旦は下げ渋る可能性があるものと考えることができます。ちなみに、76.4%というのは、重要なフィボナッチ比率の一つである38.2%の2倍であり、これも重要な比率の一つと考えられています。

図:株式会社アルフィナンツ作成

では、仮に前述した下値メドをも下抜けた場合には、次にどのあたりの水準をメドと考えることが適当と言えるのでしょうか? 

2011年12月14日更新分の本欄では、当面の目標値を計算する方法の一つとして「N計算値」をご紹介しました。そして、2011年8月高値から同年10月安値までの下げ幅を同年10月高値から差し引いて求めたN計算値によって1.2848ドルという当面の目標値を導き出したわけです。この水準は、前述した2011年1月安値の1.2873ドルにも近いことから、このあたりで一旦は下げ止まる可能性があるとも見られていました。そして、確かに2011年1月29日に1.2858ドルの安値を付けてからは一旦、1.3070ドル台への戻りを見たのです。

しかし、その後は前述の通り、一時的にも1.2700ドルを割り込むという展開になっており、もう一段の下値を目標値として設定する必要に迫られています。ここで用いられる手法の一つは、N計算値の応用である「V計算値」です。これは、上の図(下段)で言えばBからCまでの戻りを完全に打ち消すCからB2までの下げ幅と同じ分だけ、B2から下方に下押す可能性があると考えるもので、計算結果は以下の通りです。

1.3148ドル-(1.4246ドル-1.3148ドル)=1.2050ドル

つまり、少し長い目で見れば、重要な心理的節目となる1.2000ドル近辺までの下押しもあり得るということになるわけです。

コラム執筆:

田嶋 智太郎

経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役