万葉集は読んだことがありません。正確には中学生の時(かな?)に学校の授業で読んだくらいで、以来、一切読んだことがありません。古今和歌集は会社の机の袖にも置いてあるほどなのですが、やはり偏食はいけません。

たまたま知人から教えてもらった下の句。万葉集の編者である大伴家持のお父さんである大伴旅人の句ですが、あまりにも単純とは云え、13世紀も昔の日本人が、今の我々と同じようなことを同じような言葉で同じように歌っていたと思うと、中々感慨深いものです。

「生ける人 遂にも死ぬるものにあれば この世にある間は楽しくをあらな」(万葉集352)

宴会中にお酒を讃えて詠んだものでしょう。
~みんな最後は死んじゃうんだから 生きてる間は楽しくやろうよ~
ちょっと乱暴ではありますが、如何にもありそうな歌です。この身近感が、貴族的で洗練されている古今集との違いでしょうか。橘文成の次の句なども、あまりにもストレートで、これまた面白い感じがします。

「をとつひも昨日も今日も見つれども 明日さへ見まく欲しき君かも」
(万葉集1019)

裸丸出しのナイーブ(単純)な恋の歌かと思いきや、偉い人の宴会に呼ばれて、おべっかを使って詠んだもののようです。
~一昨日も昨日も今日も会いましたが 明日も会いたいあなた様です~
なるほど。激しい接待を、13世紀前にもしていたのですね。

日本のこの連続性が、多くの他国にはない魅力でしょう。なべて芸術は、偏食せずに欲張って接するべきですね。