株式市場が、ようやく火を噴きました。アメリカを始めとする各国政府は様々な手を打ってきましたが、どれも決定打にはならず、不発が続いていました。ところが、簡単に云うと「金融機関の資本部分への公的資金注入」を決めて明らかにした途端、マーケットは一気に好反応しました。2003年5月のりそな銀行への公的資金注入時と、全く同じです。
このメカニズムは、色々な説明の仕方がありますが、ひとつの分かりやすい説明は、銀行などが倒産する確率を含んだ株価形成から、倒産確率部分が抜けるので、当然株価は上方に振れていく、と考えられます。
ここで重要なのは、その本当のメカニズムよりも、たった5年前までに、アメリカの次に大きい経済大国日本に於いて、似たような不良債権問題が起き、政府は次々に様々な対応を打ち、最終的に公的資金により資本注入を行ってようやく問題は終結したと云う記憶だと思います。
マーケットの参加者は、次に何が来るか、未だどう云った手が残っているかを知っていたのです。そしてその、知っている最後の手が出るまでは、スッキリすることが出来なかった訳です。アメリカ政府はかつて日本政府が行ったことを、精密なコピーのように、但し早送りして、この1年間行ってきました。マーケットの参加者は日本でのプロセスを記憶していて、最後の手が打たれるまでは買い控えると云う学習効果がありました。アメリカ政府は日本のプロセスをその通りに焼き直しましたが、「どうしたら止まったか」と云う点に於いて、学習効果がなかったとも云えるでしょうか。しかしあとから評論するのは簡単なことです。
グリーンスパンが云ったように、金融当局者の仕事は、バックミラーを見ながら運転するようなものです。
本当の問題は、正念場は、ここからかも知れません。ここまでは、「いつか来た道」です。このJOURNEYが、ここまでなのか、まだ続くのか。ここから先は、本当の未体験ゾーンです。今はこのJOURNEYが、終着点の近くにまで来ていると望むだけです。
追伸:
先週木曜日のつぶやき(「投資銀行モデル」)に関し、「FX取引との関連性が今ひとつ理解できません。自己資金の何倍もの取引が出来るというのに「十分な担保を取っている」というくだりとの関連性が理解できません。元々「自己資金の何倍もの取引が出来る」という事に違和感を持ち続けている者として釈然としないものがあり、この機会に私の理解不足な点をご教授願います。」との御質問を頂きました。
ひとりの方が御質問されるということは、きっと大勢の方が同じ疑問を持たれたのではないかと考え、この場で回答申し上げたいと思います。
確かに保証金を超える資金を供与していることは事実です。自己資金の何倍もの取引が出来るようにしている、とも云えます。但し仮に、残念ながらお客様の考える方向とは逆にマーケットが進んでしまい、結果的にお客様に損が発生してきた時には、保証金の範囲内で損を確定できるうちに、お客様にそのお取引を閉じて頂くことになります。
FX取引の場合には、「ロスカット」と呼ばれる損確定の注文を、原注文と同時に予め自動的に出して頂くことになっております。その結果、自己資金の範囲内で損が確定するようになっています。もしマーケットがあまりにも急激に、且つ流動性を伴わないで、損が拡大する方向に動いてしまうと、保証金の範囲を超えて損失が発生する場合があり得ますが、為替の世界に於いては、流動性が極端に大きいので、このようなことは基本的に起きません。株式の信用取引も仕組みや理屈は一緒です。
御理解頂けましたでしょうか?これからも、様々なことについて、きちんと説明して参りたいと存じます。