米シティに対するアブダビ投資庁による資本注入。昨日の昼頃に明らかになったこの件は、大きなニュースでした。その額約8000億円に上る一種の転換社債で、当初は11%の利子が付き、3−4年後に普通株に全て転換されると、シティの発行済み株式の4.9%に相当すると云うものです。
このニュースは、世界の株式市場に或る程度の好感を持って受け止められましたが、シティを始めとするいくつかの欧米金融機関の財務内容や、サブプライム問題全般については、未だに懐疑的な印象が拭えない状況です。欧米のメディアなどの論調を見ても、11%は高過ぎないかとか、資本調達よりも資産売却の方が良かったのではないかとか、色々な意見が出ており、端的に云うと、要はあまり興奮していないのです。
しかし私はこの出来事の中には、多くの情報が含まれていると思います。何よりも重要なのは、シティの資本に対して、まとまった額で、値段が付いたと云うことです。「落ちてくるナイフは掴んではいけない」と云います。底が見えないものに対しては、小さな金額では値段が付いても、大きな金額では値段が付かないものです。どんなに安くても(シティの立場から云うとどんなに高くても)、値段が付くと云うことは、何処かにある”底”を確認したと云うことだと思います。これだけの買い物をする時に、しっかりとした調査をしない訳がありません。そしてその調査内容、即ち情報は、私たちには知る術がありませんが、結果としての”買う"と云う行動の中に、”情報”の内容を窺い知ることが出来ます。
この状況は、2003年初頭に、外資系の投資銀行などが日本の銀行の資本・準資本を、安い値段(銀行から見ると高い値段)で買い始めた時に似ていると思います。あの時は、ちょうどその頃が底であり、数ヶ月後のりそな銀行に対する公的資金の注入を最後の起爆剤として、マーケットは大きく回復していったのでした。今後、サブプライムに関する情報は、直接サブプライムに関する情報だけでなく、このような間接情報にも注意を払っていくべきでしょう。しかしいずれにしろ、中東によるお買い物は当面続きそうです。彼らからしてみると、ドル資産と円資産は、本当に安く見えるでしょう。原油を他の資産に替える行動は、特に代替エネルギーの実現化が見え始めてきた中で、せっせと急いで、そして大きく、続けられることでしょう。色々な意味で、目が離せませんね。