一口に60年と言いますが、これは随分長い時間です。60才以上の人はいくらでも居ますが、江戸時代が終わってからまだ137年間しか経っていません。江戸時代から世界大戦時代まで、そしてその時代から現代までがほぼ同じ期間で、それぞれの期間に世の中は大きく変わりました。今生まれてくる子供が還暦を迎える頃には、また更に大きな変化が起きていることでしょう。
我が国に於ける金融の考え方も大きく変化してきました。大戦に負け、日本全国が焦土と化し、政府に資金がなくなってしまった時、政府は『貯蓄』という仕組みを通して全国から国民のお金を寄せ集め、当時の日本の将来に必要な産業に集中投資しました。これは恰も戦艦大和の燃料がなくなった時に、全国から松の油を集めて出航させたのと同じ発想です。
この『貯蓄』と『集中投資』の仕組みが、郵便貯金であり、財政投融資、特殊法人の仕組みです。戦後7年後、国民の金融資産に関する我が国唯一の公的な組織が作られ、貯蓄増強中央委員会と名付けられました。1988年に貯蓄広報中央委員会に改称され、2001年に4月になってようやく『貯蓄』の言葉が取れ、金融広報中央委員会に改称されました(奇しくも、これは小泉内閣が誕生した月です)。日本人のお金に関する行動様式には、国策が大きく影響を与えてきました。そしてこれからもその性格は変わらないかも知れません。
これからの60年間が平和であり、且つ金融を取り巻く我が国の状況も、いい方向に変化していくことを望みたい、そんな今年の8月15日でした。