「アメリカの常識では・・・」という話をよく聞きますが、世の中そんなに簡単に一般化できるものではありませんし、少なくとも資本主義に関する「アメリカの常識」は、大概が間違った迷信だと思います。そんな間違いをいくつか拾って説明していこうと思います。先ず第一弾は、「資本主義の常識では、リターンをもたらした者にはそれに応じた報酬がある」というテーマです。
【トレーディング】によって会社に莫大な利益をもたらした者・・・【 】の中は、投資とか発明とか、色々なものが入り得ます・・・こういう人には莫大な報酬が与えられるのが資本主義の常識だというのが、「通称アメリカの常識その1」です。果たしてそうでしょうか?ヘッジファンドのトレーダーを考えてみましょう。確かに彼らは場合によっては莫大な成功報酬を得ます。しかしそれにはルールがあります。私は正にその業界にいたので、通説ではなく、真実・事実を知っているつもりです。

ヘッジファンドのトレーダーは、まず固定給は低いものです。次に持参金を持ち込むことを要求されます。トレーディングで損した場合には、その持参金を没収されてクビになって終了です。うまく行った場合でも、儲けから一定の経費であるとか、資本のコストなどのリスク分が控除され、それでも残った利益に対する数%(最大でも15〜20%程度です)が報酬として与えられます。それが本当の常識です。

つまり正しくは、「資本主義の常識では、リスク分を調整したあとの余剰リターンをもたらした者にはそれに応じた報酬がある」ということです。或いは、「資本主義の常識では、リスクを取り、かつリターンをもたらした者にはそれに応じた報酬がある」とも言えるでしょう。リターンに対する参加だけなどということは決してありません。そうやって見回してみると、間違ったアメリカの常識を振りかざしているケースが散見されることでしょう。