8月23日     <プライド>
昨日の(というか今朝の)女子マラソンは中々見応えがありました。150センチ(実は140センチ台という話もありますが)、40キロの小さな身体で優勝した野口みずき選手には心からの喝采を送りたいと思いますが、野口選手を追うキャサリン・ヌデレバとポーラ・ラドクリフの表情には、中々考えさせられるモノがありました。自他共に認める世界最速女子マラソンランナーであるラドクリフは、恐らく重要なレースで自分より先を走られたことがないのでしょう。3〜4位に甘んじていた36キロ地点に於いて走ることを止め、涙を流しながら(しかし決してサングラスは取らず)また走り出したかと思うと、またすぐに座り込んでしまいレースを棄権しました。我々には計り知れない程の大きなショックが、プライドの破壊と共に起きていたのでしょうか。世界第2位の女子マラソン選手としての自負を持っているであろうヌデレバは、気丈に野口選手を追走し、一旦は1分近く離れた差をゴール前の数キロで10秒程にまで詰めましたが、力及びませんでした。ゴールに辿り着いた後、倒れ込んで悶え苦しんでいるようなヌデレバを見ると、やはり自らのプライドの為に、ギリギリまで闘っていたのでしょう。プライドはプレッシャーとなり、時に人を苦しめます。「プレッシャーと言うより使命感でした」と答えたのは柔道の鈴木選手だったでしょうか、使命感は達成されない時のショックも少なく、従ってプレッシャーも低く、且つ、より継続的な努力が出来るものでしょうか。オリンピックの様子は、人類の極限肉体性能のコンテストであると同時に、それぞれの選手の精神面の微妙な動きが、とても興味深いドラマだと思います。