先週の中国株ですが、上海総合指数は反発、深セン総合指数と創業板指数、香港ハンセン指数は続伸となりました。中国本土株ですが、5月31日(火)に上海総合指数が+3.3%もの急騰、そして売買代金は前日比9割増の6,316億元と大商いになりました。そして香港経由の上海A株への売買(滬股通)は、37億7,100万元の買い越しと、大きく膨らんでいました。海外マネーが本土A株に流入したことになります(全般に低調だった5月30日(月)も、滬股通だけは活況でした)。この背景ですが、まず、5月27日(金)に中国当局が上場企業の自主的な株式売買停止を制限する新たな規制を打ち出しました。これによって、31日(火)にゴールドマンサックスが、MSCIエマージング・マーケット・インデックスに中国本土A株が採用される確率を50%から70%に高めたことが好感されました。
実は中国本土株の同インデックスへの組み入れは2015年も検討されていましたが、採用が見送られて、昨年夏の中国株急落の要因の1つとなりました。しかし今回は中国当局が採用されるように、投資枠の拡大や資本規制の緩和などの色々な対策を行い、しかも5月27日(金)に新たな規制を打ち出したことで注目が俄然高まった形です。もちろん同インデックスに中国本土A株の採用が決まれば、同インデックスをベンチマークとしているファンドからの資金流入が見込めます。その後、6月1日(水)に発表された5月のCaixin製造業購買担当者景気指数が49.2と、市場平均予想通りとなり4月実績の49.4を下回ったことや、中国公式製造業購買担当者景気指数も50.1と市場平均予想の50.0を若干上回ったものの、4月実績の50.1から横ばいになったことで、中国経済は大きな回復は望めず、かといって金融緩和は逆に期待できなくなったという反応で小幅に下げる場面もありました。しかし、MSCIエマージング・マーケット・インデックスへの組み入れ期待は根強く、週間ベースでは大きく上昇したままで週を終えました。
一方、香港株も上昇基調が続いた一週間となりました。米国株が堅調に推移していることに加え、深港通(深センと香港の相互株取引制度)への期待が高まっていたことに加え、5月31日(火)にMSCIエマージング・マーケット・インデックスへの中国本土A株採用期待が高まり、5月31日(火)の香港メインボード売買代金は1月7日以来となる1,000億香港ドルの大台を記録しました。香港では1,000億香港ドルという売買代金が、何か重大なことが起きている一つのサインとなっていると思います。売買代金は株価の上昇・下落率以上に大きな意味を伝えるものです。前回1,000億香港ドルを記録した1月7日は、中国本土株がサーキットブレーカーを巻き込んでストップ安となり、パニック売りを示していたものでした。今回は指数上昇する中で商いも増やしています。何となく、14年11月の中国人民銀行による電撃利下げと滬港通開始時に起きた1,000億香港ドル超えを彷彿させる気もするところです。もちろん、採用されなければ昨年夏のように、急落の引き金になる可能性もありますが、明るい材料が少なかった中国株に光明が差してきた気配も感じるところです。
コラム執筆:戸松信博
(グローバルリンクアドバイザーズ 代表取締役社長)