「君ならで誰にか見せむ梅の花色をも香をも知る人ぞ知る」。古今集に収められた、紀友則の春の歌です。「この良さはあなたにしか分かりません」という、ストレートでシンプルな歌ですが、梅の花の素晴らしさを讃えた歌とも取れますし、「君」に対するラブレターとも取れます。一方で「君」は異性ではなく同性であるという説もあり、そう考えるとお世辞の歌とも取れます。私にはこの歌は、相手が同性であれ異性であれ、同じ価値観を持つ人に対する親しみの表現というか、他人と同じ価値観を持てた時の喜びを表しているように取れます。このような感覚は、その対象物は花に限ることもなく、あらゆる造形、文化、人、考え方、更には政治などにまで及び得ると思います。価値観が共有されると、そこにムーブメントが生まれます。これはマーケットも全く同様です。というか、マーケットにムーブメントが起きている時には、逆にその底流にある共有された価値観を理解することが肝要だと思います。今の株式市場も、流れに棹さすように、その本質を見極めることが大切ですね。