新生銀行が再上場します。感慨深いものがあります。思い起こせば確かあれは7年前の3月の最終木曜日、午後3時に場が閉まる直前でした。私はその時、スクリーンと睨めっこをしながら日本国国債オプションのトレーディングをしていたのですが、スクリーンの一つに日債銀海外撤退のニュースが流れました。そしてその週末、橋本龍太郎内閣が「ビッグバンの要綱」(500項目ほどあったでしょうか)を発表したのです。当時私はトレーディングなど、会社の債券部のポジションリスク全般を見ていたのですが、ふと「日本が変わる」と強く思い、2週間後にはトレーディングを辞めて、「プロジェクト・ビッグバン」というものを立ち上げることにしました。ただ単に金融機関の資産が膨張する時代が終わり、資産を圧縮したり、整理したり、そして金融機関が変貌していく時代が来る。そういう流れに対応したビジネスを新しく創り始めなければいけないと思ったのです。いわゆる証券化、不良債権処理、企業再生ビジネスなどが、そこから生まれて行きました。それ以来、色々な形で国や金融機関のバランスシートに関わってきました。マネックスを創る決断も、その文脈の中で生まれたものです。この7年間、当時の長銀、今の新生銀行の動向は、ずっと最大限の注意を持って見守ってきました。何故なら新生銀行は、日本の金融機関・金融システムが「新しく生まれ変わっていく」象徴だったからです。その新生銀行が、遂に再上場します。日本の金融がようやく長いトンネルを抜けて、新たに飛び立っていく兆しでしょうか。日本の金融界の地殻変動はまだ始まったばかりかも知れません。これからも常に前向きに、チャレンジ精神を持って臨んでいきたいと思います。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。