週末に大阪で「株式市場の活性化」に関するシンポジウムに参加しました。中々興味深い論点が出て、私自身も楽しんだのですが、話すほどに意を強くしたことがあります。市場活性化のためには仲介者たる証券会社が改革しないといけない、景気が良くならないといけない、株式市場の商品たる上場企業自身の価値が高まらないといけない、コーポレート・ガバナンスが・・・、と議論は尽きませんが、1つ重要な視点が、一般に語られなさすぎると思います。即ち、企業価値と時価総額のギャップです。企業が生む富は最終的に、株主か、従業員か、税金などを通して社会資本かの3つに振り分けられます。給料を下げないでくれ、年金は下げないで道路も造ってくれ、そして株価も上げてくれ、というのは自己矛盾があり、無い物ねだりです。
一般に給料を上げれば企業利益は減少し、株価は下がります。年金・公共投資の費用を仮に法人税で補えば、当然企業利益は減少し、株価は下がります。過去20年間、我が国は平均400兆円程度のGDPを生んできましたが、その間に上場企業時価総額和は恐らく100兆円程度しか増えておらず、その間に払われた配当金の総額も40兆円程度です。しかし人々の生活は明らかに遙かに豊かになり、道路を含めた社会資本は大きく充実しました。企業の生んだ富の多くは、株主ではなく、従業員や社会に還元されてきた訳です。従って、企業の本源的価値は高いが、時価総額はパッとしなかったのであり、株式市場の根本的な活性化のためには、この点についてしっかりと見つめ直さなければいけないと考えています。