戦争のリスクは高まっているのでしょうか?最近ニュースを見ていると、きな臭い話が多く報道されています。各国で様々な反乱などが起き、色々な人がそれぞれの立場を主張しているので、世界は騒然としているようです。
日本に対するテロの予告もありました。しかし私は戦争や大規模なテロのリスクは逆に減少しているように感じています。戦争は、かつては結局は富の掠奪が目的であったことが多いと思われますが、現代に於いて、富の掠奪を目的にした戦いは、それが大国によってなされれば国際社会で認められないでしょうし、一方で小国によっては、圧倒的な戦力の差から、決して目的は達成され得ないので、いずれにしろ起きないと思われます。
すると現代に於ける戦争とは、不満やイデオロギーを表現する手段となっているのではないでしょうか。9・11は、唐突な、しかも極端で凄惨な、或る種の表現でした。今、世界で起きていることは、先日のマハティールの発言にしてもそうですが、唐突でない、実力に依らない、小規模な段階での表現の連発ではないでしょうか。それは大規模な突発事故に到らないための、ガス抜きであり、或いは努力ではないでしょうか。特にマハティール発言などは、彼独特の世界観に基づいた、巷間言われるような挑発的なものではなく、実は建設的な意志を感じます。ネオコン的な単純な発想では、世界平和という一種の妥協点を見出すことはできないでしょう。不断のコミュニケーション努力をして初めて、微妙なバランスが実現し得るのだと思います。最近の様々な雑音が、斯様なバランスを探し出すための作業であると思いたく、またそう信じています。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。