サーガッソー(SARGASSO)とはホンダワラ類の海藻のことですが、バーミューダ海域の、一度迷い込んだら抜けられない魔の海、難破船の吹き溜まりのような領域をサーガッソーの海と呼びます。SF物では、宇宙船の墓場のような魔の領域のことも、よくこの名前で呼ばれます。サーガッソーの名は色々な所で、ちょっと神秘めいた形容詞としてよく使われるのですが、私にとって一番馴染みのあるサーガッソーの海は、そういう名前のCDです。
以前にもつぶやきで書いたように、ドイツのECMレーベルという極めて透明感の強いジャズを専門にプロデュースするレーベルが私は大好きです。ECMのCDは大概どれでも楽しめるのでたくさん持っているのですが、その中の一つにジョン・アバークロンビーというギタリストがラルフ・タウナーというギタリストとデュオで(その他の楽器を入れないで)弾いている「サーガッソーの海」というCDがあります。大学生の時に、聴いたこともないこのレコードを唯単にECMだからということで買ったのが出会いなのですが、なんとも幽玄な、霧に包まれた無重力空間を彷徨うような音楽です。深夜に聴くも良し、目覚めに聴くも良し、手放せないCDです。1976年、オスロでの録音ですが、ジャズはバップでもニュー・ジャズでも、やはりこの数十年進歩が止まっている感を拭えません。