前に、ビジネスは相手(お客さん)の価値観が主役であり、アートは創り手の価値観が主役である、というようなことを書きました。理屈はそうだと考えているのですが、モダン・アートを見ていると、実際にはひっくり返ってしまっているケースも多いことに気付きました。
現代を生きているモダン・アーティストは、受け手とのコミュニケーションを大切にしています。価値観を伝えようとする場合もあれば、コラボレートしようとする場合もありますが、いずれにしろ受け手のことをとても気にしている作家は多いものです。
一方ビジネスの領域に於いて、お客様のニーズが先にありきではなくて、独り善がりに商品やサービスを押しつけようとしているケースもまま見られます。私達も、アートのようなビジネスにならないように気を付けていきたいと思います。或いはモダン・アートのようなビジネスになりたいと言うべきでしょうか。−何かややこしいですね。お客様の満足を第一にする、と言えば簡潔ですね。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。