江戸名所図屏風という、寛永年間の江戸の風俗を描いた屏風を見ました。寛永年間というと17世紀前半、凡そ400年弱前に描かれた絵になります。当時の江戸の様子を知るのも楽しいのですが、一番興味を惹いたのは人物の描写方法でした。現代の漫画家がちょっとヘタウマ風に描いた、と言われてもそのまま信じることが出来るような、そんな絵でした。勿論この作者が今の漫画をまねることは出来ませんが、かと言って今の漫画家が昔の絵をまねてるとも思えません。漫画は浮世絵の影響を受けているのかも知れませんが、この屏風は浮世絵誕生以前に描かれています。恐らく日本固有の文化として、平坦でペロッとした、一筆書きのような絵を描きがちである、或いはそのように物事を認知しがちであるのではないでしょうか。このように3次元ではなく2次元にデフォルメして表現する文化は、絵だけではなく、音楽などにも共通する気がします。クラシック音楽はとても立体的で、凸凹が激しいですが、日本の古来の音楽はもっと平坦な気がします。勿論根本的な人の感情などは、東西を問わないと思いますが、どのようなカタチの中に表現するかというと、東西で随分違いがあります。議論や交渉の進め方の違いなども同様です。文化が絵や音楽を創ったのか?絵や音楽が文化を創ったのか?このようなことは既に専門的な研究があるのでしょうが、起源を探ると面白いでしょうね。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。