前回「変化への準備」というつぶやきを書いたのは、2001年11月12日、今から2年ほど前のことでした(マネックスメール・バックナンバー頁、もしくはビジタートップのサイト内検索から題名を検索すると御覧になれます)。小泉首相に関しては何度もつぶやいてきましたが、この日のつぶやきはそれらの中でもかなり早い時期の中の1つです。現在自民党総裁選が行われていますが、小泉首相に功績があるとすればその最大のものは何かを考えてみると、この早い時期に書いたつぶやきと同じ結論に達しました。
小泉首相は、「我が国には何よりも構造変化が必要である」ということを強く言い続け、広く国民の中にその認識を植え付けました。そして具体的にはあまり実行しなかった。その結果、構造改革の必要を認めながら、一方で政府には期待出来ないと感じた民間セクターが、それぞれの意識で構造改革−リストラなど−を行った。そうして企業の構造調整がこの2年間の間に大きく進み、それが今回の株式市場が回復し始めた時の、いわゆる資産効果の発現を大きくしているのではないか。そう考えています。2000年初頭に日経平均が2万円を超えるミニバブルの時、資産効果は認められず、景況感はさほど好転しませんでした。恐らく株高によるメリットが、リストラ原資に吸い込まれてしまっていたのでしょう。しかし今回は既にかなり構造調整が進んでいるので、物事が好転し始める時の連鎖が軽い。そういう印象を持ちます。いずれは歴史が証明するでしょうが、変化はここからが本番であるべきだと思います。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
-
ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。