車が目的地に向かう時に、どのくらいまで到達出来るか?これを概念的に解くと、3つのモノの掛け算で計算出来ると思います。即ち、時速×目的地に対してずれてる角度のコサイン×時間。どんなに速くても、素っ頓狂な方向に走ってしまっては目的地に行けませんし、運転時間が短くては、やはり目的地に辿り着くことは出来ません。このことは人の出力についても同じことが言えるのではないでしょうか。
先ずアイデアがある。次にそれを表現・説明・具体化する必要がある。そして最後に継続すること。この3つを掛け合わせて初めて結果が出るのですが、人は得てして一番目の『アイデア』に過分に注目してしまいます。しかしアイデアだけでは駄目で、後の2つが伴っていなければ意味がありません。同様のことはコミュニケーションにも言えて、120のアイデアを50%伝えるのと、80のアイデアを90%伝えるのでは、実際の実効出力としては60対72ですから後者の方が20%多くなります。しかし伝達度を50から90に上げる努力より、アイデア自体を120から更に上げようとしてしまいがちです。そして、一般に、アイデアを磨き上げることは大変な難しさを伴うものです。一方、コミュニケーションの対象となっている人(聞き手)も必ずと言っていいほど錯覚を起こします。この例では、前者に対して後者の方が20%より優れたアイデアを持っていると思ってしまうのです。自らが出力を出そうとする時も、人の出力を評価する時も、この3つのファクターをしっかりと意識したいと思っています。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。