東京都が大手銀行に対して導入した外形標準課税、今迄に1628億円もの額が銀行から都に既に納められているのですが、御存知のように銀行と都は裁判所でこの都条例が有効か無効かを争っています。第1審、第2審と銀行側が勝訴し、現在東京都が最高裁に上告しています。
今朝の日経新聞によると、なんと都が銀行側に対して、『一旦納めさせた税の3分の2を返還するからこのことはなかったことにしよう』という和解を打診しているとのことです。私は銀行に関しては色々と問題も感じていて、一般には辛口な方ですが、こればっかりは(記事の内容が正しいとすると)銀行が気の毒な気がします。石原都知事も必ずしも嫌いではありませんが、今回の手口は少々エグイと思います。銀行は3分の2のお金(総計で1085億円になりますが)は喉から手が出るほど欲しいでしょう。しかしそのお金を取ってしまうと、果たしてこの条例が有効だったのか無効だったのか分からなくなってしまう。もしこのようなことが罷り通るなら、日本中の自治体は兎に角べらぼうに高い税金を先ず誰かから徴収して、暫くしてから3分の2返すからもう一切文句言わないでね、ということが出来てしまうのではないでしょうか。新聞記事が完全でないことを祈ります。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。