2002年末の日本の対外純資産残高は約175兆円で、前年比で僅かに減ったものの、諸外国に較べると圧倒的に大きく、12年間連続で世界最大の債権国となりました。世界最大の債務国は御存知アメリカ合衆国で、ざっと日本の倍額の純債務(プラスとマイナスが逆です)があります。世界第2位の債権国はスイスで、額は大体日本の4分の1。日本は、それほど図抜けた額の対外純資産を持っている訳です。
さて、このことにはどのような意味があるでしょうか?人は心配事があると、手元にお金を置きたくなるものです。先日(5月22日)のつぶやきにも書いた通り、この傾向は日本人には顕著だと思われます。いざという時に日本に帰ってくる資産が、海外に膨大に存在しています。そして資産が日本に帰ってくる時は、当然外貨を売って円を買う、いわゆる円転をします。これは大きな円高要因になります。日本が現在の実力に見合わず、なかなか円安にならない1つの大きな原因はここにあると思っています。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
-
ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。