今日の東京は昼前から雨になり、それがだんだん重くなってきました。春雨というには似つかわしくない、冷たくて暗い雨です。春雨というと思い出すのは、「月様、雨が」「春雨じゃ、濡れて行こう」の月形半平太で、このやり取りから読み取れる春雨の雰囲気は細く軽くて暖かいものですが、春の雨は折角の美しい桜の花の色を抜いたり、地面に落としてべたっと汚くしてしまうことが多いので、私は昔から春の雨を恨めしく思ってきました。しかし古今集には「春雨の 降るは涙か さくら花 散るを惜しまぬ 人しなければ」などという歌もあり、私の感覚とは逆に春の雨を桜の引き立て役のように歌っています。時代と人によって感覚が違うのか、或いは春雨はいずれにしろ中々厄介なものなので、敢えて風流に捉えて楽しく過ごそうとしたのか。真偽は明らかでありませんが、全ての生き物にとっての恵みの雨であることには変わりありません。景気の冷たい雨も、粋に乗り越えたいものです。