今日の東京は昼前から雨になり、それがだんだん重くなってきました。春雨というには似つかわしくない、冷たくて暗い雨です。春雨というと思い出すのは、「月様、雨が」「春雨じゃ、濡れて行こう」の月形半平太で、このやり取りから読み取れる春雨の雰囲気は細く軽くて暖かいものですが、春の雨は折角の美しい桜の花の色を抜いたり、地面に落としてべたっと汚くしてしまうことが多いので、私は昔から春の雨を恨めしく思ってきました。しかし古今集には「春雨の 降るは涙か さくら花 散るを惜しまぬ 人しなければ」などという歌もあり、私の感覚とは逆に春の雨を桜の引き立て役のように歌っています。時代と人によって感覚が違うのか、或いは春雨はいずれにしろ中々厄介なものなので、敢えて風流に捉えて楽しく過ごそうとしたのか。真偽は明らかでありませんが、全ての生き物にとっての恵みの雨であることには変わりありません。景気の冷たい雨も、粋に乗り越えたいものです。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
-
ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。