最近のイラク戦争に関するマスコミ報道を見ていると、普段とは少し違うものを感じるのですが、気のせいでしょうか?いつもどんなことに関しても同じ内容、同じトーンの報道しか聞こえてこなかったのですが、今回に限っては各テレビ局、各新聞紙、微妙にそれぞれ違うスタンスが見える気がします。
あまりにも動きが速く、そしてあまりにも人にとって根本的な部分のテーマなので、記者それぞれの解釈や信念を会社としてコントロールできなくなってきているのでしょうか。そうだとしたら、それは健康的でいいことだと思います。ジャーナリストの多様な価値観を報道機関は不必要に規制すべきではないし、その結果多様な価値観が国民に提示され、国民が自らの価値観をより多様に、立体的に構築することが可能になり、そして自らの判断でどの見解を支持するかを選択できることは、民主主義社会においては不可欠な前提条件であり、素晴らしいことだと思います。そもそも個々の記者にまだそのような多様な価値観が残されていたことを知って、ちょっと安心しました。これが一過性のものではなく、これを機会にもっともっと自由に報道が為されることを切に願います。しかし一年前に産経新聞が新聞休刊日に駅売りを始めた時は、各紙が「激動する世界情勢に鑑み」と言って新聞休刊日にも拘らず負けじと新聞を作ったくせに(産経新聞の挑戦はその後あっけなく潰されました)、今のこの情勢の中で、のほほんと各紙一斉に新聞休刊日を実施し、祝日には夕刊を発行しないテイタラクですから、実態は何も変わっていないのかも知れません。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。