バグダッドに住むサラムと名乗る男がインターネット上でブロッグ(Weblogの略)を開いています。ブロッグというのは多層構造の掲示板のようなもので、開催者の出すコメントに対して誰でも意見を書き込める形になっています。サラムは毎日、日記形式でバグダッドの日常を書いているのですが、淡々としている中にも鋭い観察があり、米国を始めとする大国への風刺は、短絡的に米国のことを悪く言う日本を含む先進諸国の一般的な考えがまだまだ浅はかであることを知らされます。またバグダッドの街中にも一般人の生活があり、逃げることも出来なく、ただ運命を享受するしかない人たちがほとんどであること、そして彼らはデモクラシーが確立されることを望んでいて、戦争はその為に正しい方法でないと考えていることなどがストレートに訴えてきます。文章が簡潔で、たまに力が入るのですが概ね淡白であることが、一層強烈なリアリティを醸し出しています。今朝(バグダッド、朝8時48分)書かれた文章は普段よりも短く、全て小文字で書かれており、ボトル入りの水の値段が急に3倍に跳ね上がったこと、学生団体がヘルメットや発電機、妙な形をした生化学兵器防衛器具を販売し始めたこと、防塵マスクの次は耳栓が買い漁られていて、街の店では予約待ちでもう買えないことなどが書かれています。インターネットの醍醐味がこんな所に発揮されていて残念でなりません。或る日突然、このブロッグは更新が止まるのでしょうか。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
-
ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。