バグダッドに住むサラムと名乗る男がインターネット上でブロッグ(Weblogの略)を開いています。ブロッグというのは多層構造の掲示板のようなもので、開催者の出すコメントに対して誰でも意見を書き込める形になっています。サラムは毎日、日記形式でバグダッドの日常を書いているのですが、淡々としている中にも鋭い観察があり、米国を始めとする大国への風刺は、短絡的に米国のことを悪く言う日本を含む先進諸国の一般的な考えがまだまだ浅はかであることを知らされます。またバグダッドの街中にも一般人の生活があり、逃げることも出来なく、ただ運命を享受するしかない人たちがほとんどであること、そして彼らはデモクラシーが確立されることを望んでいて、戦争はその為に正しい方法でないと考えていることなどがストレートに訴えてきます。文章が簡潔で、たまに力が入るのですが概ね淡白であることが、一層強烈なリアリティを醸し出しています。今朝(バグダッド、朝8時48分)書かれた文章は普段よりも短く、全て小文字で書かれており、ボトル入りの水の値段が急に3倍に跳ね上がったこと、学生団体がヘルメットや発電機、妙な形をした生化学兵器防衛器具を販売し始めたこと、防塵マスクの次は耳栓が買い漁られていて、街の店では予約待ちでもう買えないことなどが書かれています。インターネットの醍醐味がこんな所に発揮されていて残念でなりません。或る日突然、このブロッグは更新が止まるのでしょうか。