今週3回目のトレーディング絡みの話です。かつて、何年間もトレーダーをしていて学んだことは、「マーケットは常に自分よりも大きい」ということです。自分が思うのと反対にマーケットが動いた時は、決してマーケットが間違っていると思ってはいけません。まず、自分が知らない何かがある、或いは自分の考え方のどこかが間違っている、と思わなければいけません。
全ての情報は、マーケット、即ち自分以外の全員が知っていると思わなければいけません。インサイダー情報でもない限り、「A社とB社の財務指標等を見るとA社の株は割安だからAを買い建ててBを売り建てよう」などと考えてはいけません。全ての情報は自分が見る前に他の人が見ていて、既に全て株価に織り込まれていると考えるべきです。勿論マーケット(多数)が間違える時もあります。自分だけの解釈が正しいこともあります。しかしそれは極めて稀であると思わなければいけません。そしてそのような全体の期待と違うことをその会社が行った時に株価は大きく動きます。つまりマーケットの期待との乖離がマーケットを動かします。マーケットは全てを知っている筈だと肝に銘じながら、それでもまだ気付かれていないと思われる点を臆病に見つけること、マーケットの期待を、いい意味でも悪い意味でも裏切る行為をやはり臆病に見つけること、そういった態度がトレーダーには必要だと思います。
(今週日曜日のマネックス・フォーラムin金沢、上方の資産設計情報に案内があります)
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。