3月29日、イギリスがEUからの離脱を通告しました。EU発足以来、初めての離脱通告です。
次のイベントは、あと1か月余で結果が出るフランスの大統領選挙。EU離脱を公約に掲げるルペン氏勝利への懸念はまだ払拭できません。しかし、言語文化面からみると、イギリスの反EU感情はある意味必然であり、フランスはこれとは全く異なることがわかります。
イギリスはEUと海を隔てた島国です。しかしそれ以上にイギリスを他のEU諸国と隔てているのは「言語」です。英語はEU28か国の中でイギリス以外に公用語にしている国がありません。フランス語やドイツ語のように複数国で使われている言語とは異なるマイナー言語です。このため英語は、イギリスのEU離脱を受けて、公用語から外される可能性があるとも言われています。
イギリスでは、11世紀のノルマンによる征服後の一時期、公用語が英語からフランス語に変わりました。その後15世紀に英語が復権したものの、いまだに二つの言語には壁があり、特にフランス人は英語に反感を持っているとされます。
反英語感情を表すエピソードとしては、2006年の欧州首脳会議での事件が有名です。当時の欧州産業連盟会長でフランス人のセリエール氏が英語で演説を行ったことに腹を立て、フランスのシラク大統領が会議を退席してしまいました。
しかしフランスは、地理的にも、文化的にも、歴史的にもEUのど真ん中です。移民政策等一部に不満があったとしても、イギリスのように、EUの枠組み自体に対する不満が高まっている印象はありません。フランス大統領選の決戦投票は5月7日、5月9日の「EUの日」の直前です。大統領選を無事通過し、EUの日を盛大に祝えることを期待したいと思います。