政府が証券市場の活性化とか直接金融の以降をスローガンにして久しくなりますが、一向にお金は預貯金から証券市場に移りません。1400兆円と言われる個人金融資産のうち、株式や投信が占める割合は僅か9%です。この9%部分を如何に増やすかの議論をしている訳ですが、同時に91%の部分は維持しようとしています。これでは先に行けと言いながらスカートの端を踏んでいるという、あのセリフの通りです。
経済が一目散に膨張している時代なら格別、91%部分を減らさないで、9%部分を増やすことは出来ません。この状態を打破する一番有効な方法はお金を91%部分から押し出し、そのお金に自由に新たな行き場所を探させることです。郵貯の預け入れ制限を引き下げる、ペイオフはいつか必ず実施する、銀行より格付けの高い企業の銀行借入を減らして社債市場で直接調達することを促す、等々。先週金曜日、「資産設計への道」で個人向け国債について案内しました。国が発行する、恐らく銀行預金よりも利率が良くて、更に非課税の債券。当社としてもお客様のニーズを考えると取り扱わざるを得ないでしょう。しかしこれではこの国の政策とは一体何なのでしょう。政府は国防と福祉と教育以外は何もしない方がいいのではないでしょうか?
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。