昨日は中学・高校時代の美術の先生の話を書きましたが、図に乗って英語の先生のことも書かせて下さい。S先生は高校時代にアメリカに留学した経験があり、英語の発音が本場仕込みで、風貌は仲代達矢に似ており、声はドスが効いている、ちょっとカッコイイ先生でした。
阿佐田哲也さんとも一緒に麻雀を打つほどの雀師で、賭け事は滅法強く、裏の世界にも精通しているような話もよく聞かされたので、中学生の私たちには酸いも甘いも噛み分けた大人に見えました。私たちが中学1年生の頃、先生の授業がよく自習になりました。勿論正確には覚えていませんが、1年間の授業の4割ぐらいが自習だったような気がします。カリキュラムは中々消化できず、最後に端折って一気に終わらせるのですが、悪びれるでもなく、すまなそうにするでもなく、やけに毅然としていて、憧れとも尊敬とも微妙に違うのですが、見上げる存在でした。そんな先生と数年前に同窓会で会って話をしました。「先生、自習が多かったですね」と聞くと、眉をちょっと寄せて格好を付けて、昔通りの野太い声で、「あぁ、あの頃は悩んでいたんだよ」と言い放ちました。一同唖然。考えてみると当時先生はまだ30歳ぐらいで、等身大で人生と葛藤していた訳です。美術の先生といい、英語の先生といい、いい意味で人間味のある先生の多い学校でした。