近頃気になる言葉があります。「印刷」です。社内で会社説明会用の資料などを100部とかコピー機で作る時に、「明日の朝早く来て印刷します」などと若い人(私も若いですが、更に若い人)が言います。「え?印刷するの?コピーだろ?」と言うと、「はい、だから印刷です」と答えます。私はとても違和感を覚えます。印刷というのは写植であれ活字であれ、何枚でも大量に刷れる元となる「版」を作った上で複製を作る、といった意味だと理解しているので、版画は印刷であっても、毎回毎回レンズが行き来して一枚一枚刷っていくコピー機による複製は、印刷ではなく、あくまでもコピーだと私は思ってしまいます。何故みんな印刷と言うようになったか考えてみました。恐らくパソコン上のワープロやプレゼンテーション作成アプリケーション(パワーポイントなど)の普及のせいではないでしょうか?英語の「PRINT」が「印刷」と訳されていて、そこから微妙な日本語の語感が崩れていっているのではないでしょうか?まぁ、大野晋さんによると、言語は生きていてどんどん移り変わっていくものだそうですから、これはこれでいいのでしょうか?
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。