今年の啓蟄は明後日、6日です。しかし株式市場的には今日だったのでしょうか。あたかも地面の中に隠れていた虫がゴソゴソとあちこちで這い出してくるように、ほとんどの株が値上がりし、また投資家の方々も久し振りにマーケットに帰って来たようでした。いろいろ理由は考えられます。
金曜日のNY市場が上がったから(アメリカ株と日本株が連動して動く必然性はあまり感じません)。空売り規制の効果(極々短期的には効果はあるかも知れませんが、構造的には流動性を阻害するものであり逆効果でしょう)。佐藤工業の処理に、問題を先送りにすることと決別し積極的に不良債権を処理する方向への、流れの転換を見た(今までだって同じような処理はありましたが、結局流れは変わりませんでした。何故今回だけ特別なのかという積極的な理由は見あたりません)。
恐らく本当の理由は「買い戻し」でしょう。上に挙げた事柄は、買い戻しを促す理由にはなります。でもそれだけだと思います。佐藤工業の例が新しい流れの始まりであるかどうかなど、今日の時点では分かる由もないと思います。これから継続的に改革が進められていって初めて事後的に「あぁ、あれが新しい流れの始まりだった」と言えるのでしょう。株価の動きに惑わされないで、しっかりと構造改革を進めていって欲しいと、切に願います。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。