今朝の東京はどんよりとした曇り空だったのですが、天気予報に反して昼過ぎから晴れて暖かくなってきました。荷風の日和下駄にも出てくるように、東京の街は案外木々が多いものです。あたかも香を焚くように、木々に咲いた花々の匂いが風に乗って漂ってきます。それは鼻を衝くようなものではなく、あくまでもすがすがしく優しいものです。匂いのある季節は春と夏ですが、「香る」季節は春だけでしょうか。
「梅が香を袖に移してとどめてば春はすぐともかたみならまし」(読人知らず)私の好きな古今集には「香る春」と「聴く秋」の歌が圧倒的に多いのですが、それも肯けます。香りを留められるのは、実は袖ではなくて歌だったのでしょう。だから皆競って「香る春」を詠んだのではないでしょうか。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。