先週の中国株ですが、上海総合指数は反発、深セン総合指数と創業板指数は続伸、香港ハンセン指数は続落となりました。中国本土市場は先週から続いているIPOによる需給悪化懸念から、スタートは軟調でした。しかし、中国証券監督管理委員会(CSRC)が銀行の株式仲介事業への参入を認める可能性を検討しているとの報道から銀行株が上昇すると、株価指数も切り返しました。3月10日(火)は反落となったものの、3月11日(水)は中国当局が年金基金の株式運用比率引き上げを検討しているとの報道や、同じく中国当局が中国人民銀行(中央銀行)による地方債の買い入れを検討しているとの報道から大きく反発。

3月12日(木)も近く地方政府の債務を圧縮する政策が発表されるとの報道があり、銀行株を中心に株価は更に上昇しました。この案は地方政府が合計1兆元の債務について、期間が長くて金利の低い新発債への借り換えを認めるという案で、中国の銀行の最大の懸念材料となっている不良債権の減少につながります。そして実際に3月13日(金)にこの政策は発表されました。さらに決算発表シーズンに入り、平安保険が30%の増益を達成したことから銀行株に業績期待の買いも入り、結果として中国本土市場は3月11日(水)から3日続伸となり、週を終えています。

香港株も本土株上昇の好影響を受けて、香港に上場している中国企業の株価指数である香港H株指数は反発に転じました。しかし、米国の利上げが早まるのではないかとの懸念感から金利に敏感な香港の不動産株や公益株が売られ相場を押し下げました。中国企業は中国の金融緩和によって金利負担が減り、株式市場にお金が流れやすくなっている一方で、香港はその正反対の動きが出ているわけです(香港ドルは米ドルとペッグしているため、香港の金利は米国の金利に連動するためです)。

先週発表された中国の経済指標ですが、3月10日(火)に2月の消費者物価指数が1.4%と発表され、市場平均予想1.0%増や1月実績0.8%増よりも高い結果となりました。また、2月の中国の新規人民元建て融資額は1兆200億元と、1月実績の1兆4700億元は下回ったものの、市場平均予想の7500億元は上回りました。3月11日(水)に発表された2月の中国小売売上高は10.7%増となり、市場平均予想の11.6%増、12月実績の11.9%を共に下回りました。2月の中国鉱工業生産も6.8%増となり、市場平均予想の7.7%増、12月実績の7.9%増を共に下回り、1-2月の中国固定資産投資も13.9%増と、市場平均予想の15.0%増、2014年1-12月実績の15.7%増をそれぞれ下回りました。全体として中国経済の弱さを示す経済指標が発表されたわけですが、逆にこれらは、金融緩和への期待感を膨らませる結果となっています。

コラム執筆:戸松信博