>>【米中間選挙速報:前編】上下両院で民主党が過半数を確保する見通し、今後の米国株はどうなる?
米国株を支える経済と企業業績の底堅さ
米国経済の底堅さも、株価の支えとなっています。7~9月期の実質GDP速報値は前期比年率3.4%増と、前期の同2.2%増から成長が加速しました。在庫や貿易の変動に左右されにくい、個人消費と民間固定投資を合わせた民間需要も、同4.9%増と力強い伸びを示しています。
消費と設備投資の両方が成長に寄与しており、企業の売上を支える需要は依然として強いと判断しています。ただし、雇用の伸びや直近の実質消費には鈍化も見られ、この点は引き続き注意が必要です。
こうした経済の底堅さに加えて、僕がこの先の米国株を引き続き前向きに見ている最大の理由は、企業業績の力強さです。FactSetの10月30日時点の集計によると、S&P500構成企業の60%が第3四半期決算を発表し、そのうち82%で1株当たり利益(EPS)が市場予想を上回りました。発表済み企業の実績と未発表企業の予想を合わせた第3四半期の増益率は、前年同期比30.2%となっています。さらに、第4四半期も同28.4%の増益が見込まれています。
政治をめぐる不透明感などから、株価が一時的に大きく動く場面はあるでしょう。それでも、企業が利益を伸ばし続けることができれば、米国株の上昇を支える重要な原動力になると考えています。
大手クラウド企業の決算にみるAI需要の強さ
AIは2027年の増益を支える柱です。イラン情勢、原油高、金利上昇などのニュースで株価が下がるたびに、「AIブームはもう終わりだ」と考える人もいるでしょう。しかし、僕はそうではないと考えています。AIへの需要と企業の投資計画が、その見方を支えているからです。
それを象徴するのが、アマゾン・ドット・コム[AMZN]のアンディ・ジャシーCEOの発言です。マーケットウォッチの10月30日の記事によると、同氏は小売とAWSが、それぞれ年商1兆ドル規模に育つ可能性を示しました。AWSは今後5~10年での到達を見込み、小売は2032年に1兆ドルに達するとの市場予想もあります。ウォルマート[WMT]の2026年1月期売上高が約7,130億ドルであることからも、構想の大きさがわかります。
足元の数字からも、需要の強さが確認できます。アルファベット[GOOGL]の第3四半期のクラウド売上高は前年同期比103%増、AWSも約39%増でした。AI需要は依然として供給を上回っています。2027年の大手クラウド企業の設備投資は、市場予想が前年比37%増であるのに対し、ゴールドマン・サックス[GS]は54%増を見込んでいます。企業のAI導入が続けば、半導体、ネットワーク機器、電力設備など、幅広い分野に事業機会が生まれます。
マスク氏によれば、エヌビディア[NVDA]の旧型H100の賃料は新品時より高く、短期契約の電力当たり単価も上昇中です。AIの改良で同じ電力から得る成果が増えるとの説明です。急速な陳腐化への反論ですが、需給が緩めば賃料は下がり得ます。
AI投資をめぐる規制と収益化の課題
では、米中間選挙後のAI規制はどうでしょうか。民主党が上下院の多数派となっても、AI産業を広く制約する主要法案の成立には、超党派の合意が必要となる場面が多いでしょう。大統領が拒否権を行使すれば、覆すには上下院それぞれで投票した議員の3分の2以上の賛成が必要です。AIは米中の技術・安全保障をめぐる競争の核心でもあり、連邦政府がAIを後押しする政策の方向性は大きく変わりにくいと考えます。
ただし、電力や水の確保、土地利用をめぐる州や自治体の規制には注意が必要です。データセンター建設で住民の反対が強まれば、許認可の遅れや工期の長期化、コスト増につながります。
こうしたことから、僕は米中間選挙後もAI設備投資の勢いは維持されるとみています。さらに、2028年の大統領選挙に向けて政策の不確実性が高まる前に、企業が投資を前倒しする可能性もあります。実需の拡大にこうした動きが重なれば、2027~28年にかけて、AI設備投資の勢いはむしろ強まる可能性があると考えています。
また、投資額の増加と株主の利益は、必ずしも同じ速度で伸びません。設備投資が先行すればフリーキャッシュフローは圧迫され、その後は減価償却費や電力コストも増えます。売上と利益がこれらの負担を吸収できるかが重要です。AI検索の利用拡大を収益につなげる仕組みも問われます。市場は今後、投資規模だけでなく、収益化と投資回収の進展をより厳しく評価するでしょう。
調整局面でこそ見極めたい、企業の成長力と業績見通し
成長テーマが続いていても、株価が一直線に上昇するわけではありません。その過程では、大幅な調整が起こることもあります。1990年代後半のドットコムブームの相場をみてみます。ドットコムブームは、ネットスケープが世に登場し始まったと言われています。
ネットスケープ登場後の1994年12月から2000年3月までに、ナスダック総合指数は約6.9倍に上昇しました(図表)。しかし、その間にも1割前後、あるいはそれ以上の調整が何度も繰り返され、1998年夏から秋には、日中高値から安値まで約33%下落しました。
つまり、大きな値下がりがあったからといって、それだけで成長テーマが終わったとは限らないのです。一方で、ドットコムブームがやがてバブルへと発展し、最終的に崩壊したことも忘れてはいけません。
ただ、僕は現在のAI相場が、すでにバブル崩壊を迎える段階にあるとは考えていません。調整局面でこそ、目先の値動きだけで判断せず、企業の成長を支える需要や業績の見通しが変わっていないかを見極めることが大切です。
米国経済と企業業績が底堅さを保ち、AIへの実需と投資も続くのであれば、2026年末から2027年の米国株には引き続き上昇の余地があると考えています。
市場が懸念していた米中間選挙という不確定材料が一つ減ったことは、素直に歓迎したいと思います。そのうえで、相場が大きく下げる局面では、ヘッドラインニュースに惑わされず、企業の業績見通しを確かめながら、投資機会を探る姿勢が大切です。政治ニュースなどをきっかけとした一時的な売りなのか、それとも需要の減速や利益予想の下方修正を伴う下落なのか。その違いを冷静に見極める必要があります。
