2026年10月23日(金)8:30発表
日本 全国消費者物価指数2026年9月分速報

【1】結果:コアCPIは前年同月比2.1%上昇 おおむね市場予想に沿った内容に

2026年9月の全国消費者物価指数(以下、CPI)は、ヘッドラインの総合指数と生鮮食品を除くコアCPIは、いずれも前年同月比2.1%上昇となりました。生鮮食品・エネルギーを除くコアコアCPIは同2.4%上昇となりました(図表1・図表2)。

コアコアCPIが他2指標を上回る伸びであったことから、原油高などを起点とするコストプッシュ型インフレ以上に、広範な品目に物価上昇の兆しが見られると考えられます。

【図表1】全国CPI 2026年9月速報値結果
出所:総務省、ブルームバーグよりマネックス証券作成
【図表2】全国CPIの推移(前年同月比、%、%ポイント)
出所:総務省よりマネックス証券作成

【2】内容・注目点:値上がり品目の広がりと短期的なインフレ加速に注目

物価上昇は幅広い品目に波及

国内の物価上昇圧力は、再び強まりつつある可能性があります。日本銀行が公表する物価の上昇・下落品目比率を確認すると、8月時点で上昇品目比率は74.3%と、全体の約4分の3を占めています。2025年後半以降、同比率は低下傾向にありましたが、足元では持ち直しの動きがうかがえます。一方、下落品目比率は8月に21.2%へ低下し、上昇品目比率との差も拡大しました。

これらの動きは、物価上昇が一部の品目に集中するのではなく、幅広い品目に波及していることを示唆しています。もっとも、上昇品目比率は2023年や2025年のピークを下回っており、現段階では物価上昇の広がりに持ち直しの兆しが見られる、と評価するのが妥当でしょう。

【図表3】日銀公表 上昇・下落品目比率(%、%ポイント)
出所:日本銀行よりマネックス証券作成
※2026年8月までのデータ

物価上昇ペースが強まっている

加えて、今回の9月CPIでは、短期的な物価上昇ペースの加速も確認されました。図表4は、生鮮食品・エネルギーを除くコアコアCPIについて、前年同月比に加え、前月比、3ヶ月前比、6ヶ月前比をそれぞれ年率換算して示したものです。前年同月比が過去1年間の物価変動を表すのに対し、短い期間の変化率を年率換算することで、足元のインフレの勢いをより敏感に捉えることができます。

9月は、コアコアCPIの前年同月比が2.4%となった一方、3ヶ月前比年率は4%程度、前月比年率では6%程度まで上昇しました。短期的な指標ほど高い伸びを示していることから、最近数ヶ月の物価上昇ペースが、過去1年間の平均を上回っていることがうかがえます。

コアコアCPIは、価格変動の大きい生鮮食品とエネルギーを除いた指数です。加工食品など輸入コストの影響を受ける品目も含まれるため、今回の結果だけで国内の賃金上昇を起点とするインフレが加速したとは断定できませんが、エネルギー価格の直接的な影響を除いても物価上昇ペースが強まっている点は、注目すべき変化と考えられます。

【図表4】コアコアCPIのトレンド(%)
出所:総務省よりマネックス証券作成
*前年同月比は原系列。前月比、3ヶ月前比、6ヶ月前比は季節調整済指数から算出した年率換算値

複数の要因による生活用品の値上げ、今後の重要な焦点とは

また、家計の負担感につながりやすい飲食料品でも、価格転嫁の動きが続いています。帝国データバンクの「食品主要195社」価格改定動向調査によれば、9月の飲食料品の値上げは4,965品目と、2026年で最多となりました。調味料や加工食品など、日常的に購入する商品の値上げが相次いでいます(※)。

こうした値上げの背景には、中東情勢の緊迫化に伴う原油・包装資材価格の上昇に加え、円安による輸入コストの増加、人件費や物流費の上昇など、複数の要因が重なっているとみられます。

以上を踏まえると、足元の国内インフレは、エネルギー価格の直接的な上昇だけでは説明しきれない広がりを見せています。もっとも、輸入コストの間接的な価格転嫁も含まれるため、今後はこうした価格上昇が一時的なものにとどまるのか、それとも賃金やサービス価格を通じて持続的なインフレにつながっていくのかが重要な焦点となるでしょう。

(※)帝国データバンク「食品主要195社」価格改定動向調査 ― 2026年10月(2026年9月30日公表)

【3】所感:10月の利上げは見送りの公算も、金融政策正常化の方向性は不変か

人件費転嫁によるインフレ加速も、10月の日銀会合は利上げ見送りの公算

9月の全国CPIは、エネルギー以外の幅広い品目で物価上昇圧力が確認される結果となりました。なかでも、サービス価格は前年同月比1.5%上昇と、8月の同1.2%から加速しています。宿泊料など一部品目の影響も大きいものの、人件費の上昇を価格に転嫁する動きが広がっている可能性があり、国内の基調的なインフレの持続性を判断するうえで注目すべき変化と考えられます。

こうしたなか、10月22日付の日本経済新聞は、日銀が10月29~30日の金融政策決定会合で政策金利を1.25%に据え置く方針だと報じました。9月に追加利上げを実施したばかりであり、その影響を見極める必要があることなどが背景にあるとされています。

金融正常化のシナリオは不変、次回以降の利上げに向けた今後の焦点

もっとも、今回の利上げ見送りは、金融政策正常化の終了を意味するものではないでしょう。植田総裁は10月6日の講演で、基調的な物価上昇率が2%に近づく一方、実質金利はなお低い水準にあり、金融環境は緩和的との認識を示しました。そのうえで、経済・物価情勢に応じて引き続き政策金利を引き上げる方針を維持するとともに、基調的な物価上昇率が2%を超えて上振れるリスクにも警戒を示しています。

今回のCPIで確認された物価上昇の広がりや短期的な加速は、こうした日銀の認識を後押しする材料と考えられます。ただし、原油高や円安によるコスト上昇は家計の購買力を圧迫する側面もあり、物価の上振れが必ずしも国内需要の強さを意味するわけではありません。

したがって、10月会合では利上げが見送られる公算が大きいものの、基調的な物価上昇率が2%程度で安定するよう、日銀は今後も段階的に金融緩和の度合いを縮小していくとみています。今後は、賃金上昇を背景としたサービス価格への転嫁が持続するかに加え、今回公表される展望レポートで物価見通しや上振れリスクの評価がどのように変化するかが、次回以降の利上げ時期を判断する重要な材料となるでしょう。

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太