日本は世界有数の地震大国です。加えて近年は大雨による災害も多発しています。今回は、災害時にも備えられるポートフォリオを一緒に考えていきましょう。預貯金、金融資産、保険にはそれぞれ役割があり、組み合わせることで、守りつつ増やすことにつながります。
もしもの備えの「預貯金」とその後の備えの「金融資産・保険」
災害が起きた時のお金の備えには大きく2つあります。「被災直後の生活資金」と「被災後の生活の立て直しにかかるお金」です。
被災直後の生活資金:一時滞在費、衣服・日用品費、食費などの生活費
もしもの備えとして最低でも生活費6ヶ月分は預貯金で用意しましょう。それだけあれば、被災直後の生活資金にも十分回せます。災害時の出費としては、「ホテルなどの一時的な滞在費」「避難の際に持ち出せなかった衣服や日用品の購入費」「食費などの生活費」などが挙げられます。
この生活費6ヶ月分の預貯金の存在は、災害以外でも当然強い味方です。病気やケガで働けない場合にもらえる傷病手当金や、失業中にもらえる失業給付は、受給中に所得税の支払いはありませんが、住民税(前年度の所得に基づいて翌年度に支払うルールのため)と社会保険料の支払いは続きます。預貯金の存在がいかに大きいかわかるかと思います。
被災後の生活の立て直しにかかるお金:住宅再建費、家財道具費、引っ越し代金など
被害の状況にもよりますが、被災から数週間~数ヶ月後には、生活を元に戻すための動きが始まります。このフェーズになって必要になるのは、「被災後の生活の立て直しにかかるお金」です。
内閣府のウェブサイトによると、2011年の東日本大震災で全壊した住宅を新築する際の費用は平均約2500万円。それに対し、公的支援として受給できた金額は善意の義援金を含めても約400万円と、住宅の再建だけで約2100万円が不足していました。実際は、住宅の再建費用だけでなく家財道具を用意する費用や、引っ越し費用もありますので、必要な金額はさらに多くなります。
改めて保険の内容を確認しよう
家を購入している人は、まず火災保険の内容を確認しましょう。火災保険は、家が火事・洪水・落雷などの被害にあったときに補償を受けられます。家財の補償もつければ、家電や家具が損害を受けた場合に保険金を受け取ることができます。ただし、火災保険は地震の被害では保険金が出ません。地震保険は単体では加入できず、火災保険とセットで加入しなければなりません。地震保険に加入していなければ、相応の保険料負担はありますが、加入しておくと安心です。
自動車を保有している人は、車両保険の内容を確認しましょう。車両保険は、台風や大雨による水没、洪水、土砂崩れ、強風による飛来物での傷など、多くの自然災害による損害を補償します。ただし、地震・噴火・津波による被害は通常の車両保険では対象外となるため特約への加入が必要です。
また、将来お金で困ることがないように、かつインフレから資産を守るために、株や投資信託などを活用してコツコツと資産形成をしましょう。
時間をかければ、まとまった資産を築くことができる
十分な資産があることは、被災中の精神的な安心につながるだけでなく、被災後の選択肢を広げてくれます。
長期・積立・分散投資を行えば、時間をかけながらまとまった資産を築くことができるでしょう。これは、多くの方が実践できる方法です。
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金融庁「はじめてみよう!NISA早わかりガイドブック」には、1989年以降、毎月同じ金額ずつ国内外の株式と債券に積立投資した場合の年間収益率が紹介されています。
保有期間が5年だとタイミングによっては、利益が出ることもあれば、損失が出ることもあるとわかります。しかし20年間投資した場合は、少なくとも1989年以降のデータでは元本割れすることなく、年率2%~8%で増やせています。
あくまでも過去データに基づく分析なので、将来を保証・予測するものではありませんが、積立・分散投資を20年以上行うことで、元本割れリスクを下げながら堅実に増やせる可能性が高いと言えるでしょう。
現金比率の目安は「120の法則」、普段から投資しすぎを防止
インフレから資産を守り、将来に備えるためとは言え、資産のほとんどすべてを投資に回してしまうのは考えものです。最近では、「NISA貧乏」も話題になっています。NISA貧乏とは、特に若年層がNISAへの投資に資金を回しすぎて、かえって日常生活が苦しくなることを指します。預貯金など安全資産はほとんど保有していないのが実態です。
何かあった時にはNISAから取り崩す戦略のようなのですが、災害など「もしも」があった際に株式市場の暴落が重なっていれば、お金を引き出すと大きく損をしてしまうことになります。やはり普段から現金比率は一定水準に保っておくのがリスクヘッジになり、安心して暮らせることに繋がります。
あくまでひとつの目安ですが、無リスク資産(現預金・個人向け国債)とリスク資産(株式・投資信託など)の割合は、「自分の年齢」と「120から自分の年齢を引いた数字」を対応させる「120の法則」がおすすめです。
たとえば、自分の年齢が40歳であれば、無リスク資産:リスク資産の割合は40:80にすることを考えます。資産が1200万円あれば、無リスク資産は1200万円×40/120=400万円、リスク資産は1200万円×80/120=800万円、というイメージです。
60歳ならば、無リスク資産とリスク資産の割合は60:60。資産が2000万円あるなら、無リスク資産・リスク資産ともに1000万円となります。
ただし、総資産が少ない場合はこの限りではありません。資産が120万円であれば計算上は「無リスク資産40万円、リスク資産80万円」ですが、無リスク資産40万円ではもしもの備えとしては少なすぎます。最低でも生活費6ヶ月分は預貯金で用意しましょう。
なお、一般的な「120の法則」は債券と株式の割合で資産の割合を考えるのですが、これとは別に預貯金などの無リスク資産を考える必要があるので、使いにくいのが難点。今回紹介した「120の法則」は、筆者が使いやすくアレンジしたものです。
資産形成のメインは株だが、債券や金を一部加えるのがベター
世界最大規模のヘッジファンドであるブリッジウォーターが公表する「Paradigm Shifts」をもとに、1920年代から2010年代までの100年間を10年ごとに区分した、株・債券・金の3つの資産クラスの実質リターン(インフレを考慮したリターン)を確認してみましょう。もっともパフォーマンスがよかった資産を黄色、もっともパフォーマンスが悪かった資産をグレーにしています。
これを見ると、株はパフォーマンスが好調な資産であることがわかります。3つの資産クラスの中でももっとも値上がりしたことが6回もあります。やはり資産形成のメインは株です。
しかし、株も常に好調というわけではありません。1930年代・2000年代は逆に、他の資産と比べてもっともパフォーマンスが悪かった資産となっています。株が不調なときには、債券や金が値上がりしています。
よって、価格変動の大きい株(株に投資する投資信託)だけに投資するのではなく、債券(債券に投資する投資信託)、金(金に投資する投資信託)へ投資を行ったり、複数の資産に投資するバランス型投資信託を活用したりすれば、資産全体の値下がりリスクを軽減しながら、堅実に資産を増やす期待ができます。
高配当株投資も選択肢に
株式市場の暴落中にインカムゲインという形でリターンを得たいなら、高配当株(高配当株に投資する投資信託)を組み合わせるのもいいですね。高配当株とは、株価に占める配当金の割合(配当利回り)が高い銘柄のこと。一般に、配当利回り(1株あたり配当金÷株価)が3%を超えると高配当といわれます。
高配当株は市場全体の暴落が起こると株価は連れて下がりますが、株価が下落した際に相対的に配当利回りが上昇し、ほかの銘柄と比べると高配当と言えるため買われやすくなるという特徴があります。値下がりから回復するまでの我慢の時期にもリターンが得られ続けるのが精神的に嬉しいポイントであり、下落からの回復も待ちやすくなります。
預貯金、金融資産、保険それぞれに役割があり、適材適所が重要
災害時にも備えられるポートフォリオを一緒に考えてきましたが、預貯金、金融資産、保険それぞれに役割があり、適材適所が重要です。株式市場が好調だとリスク資産に偏りがちですが、現金比率も考え、普段から「お金の備え」と「資産形成」の両方を実践していきましょう。
