電子カルテの活用が、いよいよ本格化

8月末、残暑の候。この時期、永田町の政治の世界はまだ夏休みの状態ですが、霞が関の官僚はすでに活発に動き始めています。

7月に来年度の予算編成の方針、いわゆる「骨太の方針」が定まったことを受け、各省庁が来年度予算の概算要求が活発に提出し始めました。政府の規制改革推進会議はこれに先立ち、6月末に「官民投資ロードマップ」を発表しました。民間投資を最大限に引き出すため、答申の柱となる55項目を打ち出しています。

具体的には、(1)歩行型ロボットの道路での使用許可基準の明確化、(2)自動運転車による事故を運輸安全委員会の調査対象に追加、(3)銀行からの企業に対する出資規制の緩和、(4)農地の集約状況をデータで把握する計算式の算出など、細部にわたる項目を挙げています。

そしてその中の一つとして、(5)電子カルテデータの共有範囲を拡大し研究開発で活用する、という方針も盛り込まれました。株式市場でかつて何度もテーマとして挙がってきた医療現場での電子カルテの活用が、いよいよ本格化することになりそうです。

医療分野でビジネスを展開するには、データの収集と分析が必要です。こうした医療データビジネスが、大きな転換点を迎えつつあります。

医療データビジネスは病気を防ぎ、医療費を減らす方向へと変化

これまで医療データに関わるビジネスでは、レセプト(診療報酬の明細書)や健康診断データを集め、製薬会社に販売してマーケティングに活用してもらう形が主流でした。しかし、ウェアラブル端末や家庭医療機器の普及が進み、医療データの世界が変わりつつあります。

普段の暮らしの中で歩いた距離や歩数、運動時間、心拍数、血圧、体重、血糖値など「日常生活のデータ」がリアルタイムで連続的に取得できるようになったためです。

この日常的なデータに基づけば、医療データビジネスは「病気の発症を予測して未然に防いだり、あるいは軽度の段階で治療につなげたりして医療費を減らす」方向へと変わっていくと考えられます。

これによって医療データビジネスの関連市場は大きく拡大すると予想されます。これまでのような製薬会社だけでなく、企業の健康保険組合、自治体、病院、医療機器メーカー、保険会社などにも広がると見られます。拡大する医療データ市場に関連する銘柄を掘り下げてみます。

拡大を続ける医療データ市場の関連銘柄4選

オムロン(6645)

FA機器や制御機器を得意とする電気機器メーカー。血圧計、心電計など健康機器にも強みを持ち、血圧計は2021年に世界累計販売台数が3億台を突破した。近年は事業ポートフォリオを大きく組み替えており、車載事業、電子部品事業を相次いで売却。その上で、2023年には医療データを扱うJMDC(4483)を買収しました。2030年までの長期事業計画では、ヘルスケア領域に最も力を入れ、医療データを駆使する医療機器メーカーへの転換を図る。

【図表1】オムロン(6645):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2026年8月27日時点)

JMDC(4483)

健康保険組合の加入者の医療データを匿名加工し、製薬メーカーや生命保険、損害保険会社へ提供。マーケティングや学術的なエビデンスの構築を支援する。2023年10月にオムロンが株式の54.1%を取得し子会社となった。これまでに獲得したレセプトデータは2026年3月時点で26億件、健康診断データは9400万件を上回る。今後は個人向けの健康記録サービスやスマホ上での医療相談サービスなど様々な取り組みに活用する方針。

【図表2】JMDC(4483):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2026年8月27日時点)

エムスリー(2413)

医師・薬剤師・看護師などの医療従事者向け専門サイト「m3.com」(エムスリー・ドットコム)を運営。医師に製薬会社の医薬情報を提供する「MR君」を展開する。国内最大級の医療系ポータルサイトで、日本の医師の9割が登録している。医師・薬剤師の転職支援も開始した。電子カルテに蓄積されたデータを活用したマーケティング支援、医師の開業・経営支援、医院の事業承継支援や、一般の人々が健康について医師に相談できるQ&Aサイトの運営も行う。

【図表3】エムスリー(2413):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2026年8月27日時点)

SOMPOホールディングス(8630)

3大メガ損保のひとつ。損保ジャパンと日本興亜損害保険が2010年に統合して発足。第一生命とも包括提携している。顧客や社会のニーズに合わせてグループ事業の枠組みを柔軟に変更するのが特徴。介護やフィットネス施設の運営など、保険・非保険ビジネスに積極的に進出している。2024年には、家族の介護に関わるさまざまな問題をサポートする事業も開始。介護事業などで蓄積したデータやノウハウを活用し、認知症予防や健康支援などのサービス展開を進めている。

【図表4】SOMPOホールディングス(8630):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2026年8月27日時点)