先日、あるオンライン番組で、子どもの頃から株式投資を学ぶ大切さについて話しました。
早いうちから少しずつ投資を経験することには、大きな意味があります。
少額でも、投資を続ける中で得られる学びは少なくありません。
しかし、番組を終えた後、一つの疑問が浮かびました。
そもそも、自分自身が投資を始めていない大人が、子どもに「投資を始めたほうがいい」と説得力を持って勧められるのかということです。
2025年末時点のNISA口座数は、約2821万口座です。
このところ日本株の上昇が注目され、投資への関心も高まっています。
とはいえ、成人人口と単純に比較すると、NISA口座を持つ人はおよそ4人に1人にすぎません。
逆にいえば、7割を超える大人が、まだNISA口座を持っていない計算になります。
実際、僕自身のXアカウントでも、NISAの利用状況についてアンケートを行ったところ、約1,000人から回答が寄せられました。そのうち、「自分はNISAを利用していない」「周囲にもNISAを利用している人がいない」と答えた人は、合わせておよそ7割に上りました。
X上の簡易アンケートであり、全国調査と同列には扱えませんが、公的統計から見える傾向とも、おおむね一致する結果となりました。
ただ、口座を開いただけで、実際には使っていない人もいます。
夕方のテレビ番組では、ときどき年金だけで暮らす高齢者の生活が取り上げられます。
食料品の値上がりで、買いたい物を我慢する。電気代を気にして、冷暖房を控える。病院に行く回数まで考えなければならない。
こうした現状を目の当たりにすると、老後資金は年を取ってから慌てて準備できるものではないことが良くわかります。
だからこそ、子どもに伝える前に、その見本となるべき大人自身が投資を始める必要があります。
NISAは、資産家だけの制度ではありません。
毎月5,000円や1万円など、無理のない金額から始められます。
大切なのは金額の大きさより、早く始めて長く続けることです。
そして、子どもには大人にない強みがあります。
それは「時間」です。
運用で得た利益を再投資すれば、利益が新たな利益を生む「複利」の効果が期待できます。
始める時期が早いほど、毎月の金額が小さくても、長い時間を味方につけられます。
もちろん、投資をすれば必ずお金持ちになれるわけではなく、値下がりもあります。
それでも、若いうちから準備を続ければ、将来、お金に困る可能性を減らせます。
お金に余裕ができれば、人生の選択肢も増えます。進学する、海外で学ぶ、仕事を変える、起業する、家族との時間を増やす。
投資の目的は、資産額を増やすことだけではありません。
自分が本当に望む道を選べるようにすることです。
以前、マネックス証券のオウンドメディア『マネクリ』コンテンツでインタビューをさせていただいた二児の母親のSさんは、長年の投資経験を娘さんにも伝えてきました。
娘さんが小学生の頃からジュニアNISAを使い、どの会社や投資信託に投資するかを親子で話し合ったそうです。Sさんは、「この商品を買いなさい」と答えを教えたのではありません。
会社は何をしているのか。なぜこの投資先を選ぶのか。株価が下がった時にどう考えるのか。
親子で一緒に考えました。
経験を重ねるうちに、娘さんは値下がりを単に怖がるのではなく、「安く買える機会でもある」と考えられるようになったそうです。
これは、教科書を読むだけではなかなか身につかない、実体験ならではの学びです。
大人でさえ身につけるのが難しい投資の感覚を、娘さんは若いうちから育んでいたのです。
子どもは、親の言葉以上に行動を見ています。
親自身が投資をしていないまま「将来のために投資をしなさい」と言っても、説得力は生まれにくいでしょう。
一方、親が日常の生活のなかで、「NISA投資で今月は資産評価額が下がったけれど、長く続けるから慌てない」と話せば、その姿自体が金融教育になります。
子どもに投資を教える第一歩は、難しい用語の説明ではありません。
まず親がNISAを始め、迷ったこと、失敗したこと、続けて分かったことを率直に話すことです。
親が子どもに残せるのは、お金だけではありません。
お金を育てる習慣、値下がりしても慌てない考え方、企業や世界の動きに関心を持つ姿勢も、次の世代へ渡せます。
子どもには時間があります。
その時間を生かせれば、将来、お金のために選択肢をあきらめる場面を減らせます。
ですから、子どもに投資を勧める前に、まず大人がNISAを始めましょう。
親が自ら投資を経験し、そこで学んだことを子どもに伝える。
それこそが、家庭でできる最も身近で分かりやすい金融教育であり、子どもの将来の選択肢を広げることにもつながるのです。
