モトリーフール米国本社 – 2026年6月30日投稿記事より

エヌビディア[NVDA]とブロードコム[AVGO]が売上高・利益ともに驚異的な成長を遂げている中、株価が低調な理由

データセンターにおけるAI計算ワークロードは「推論」へと急速にシフトしています。デロイトの予測では、データセンターのAI計算ワークロード全体に占める「推論ワークロード」の割合は2025年の50%から2026年は2/3に上昇する見通しです。

こうした流れを受け、推論処理を低コストで効率的に実行できるAIチップへの需要が大きく増加しています。現在、この分野をリードしているのはエヌビディア[NVDA]です。同社は、推論処理にかかるコストを大幅に引き下げるチップシステムの開発を積極的に進めており、市場で優位な立場を築いています。一方、カスタムAIチップを設計するブロードコム[AVGO]でも、売上高、利益ともに驚異的な成長を遂げています。

しかし、こうした好調な事業環境にもかかわらず、上記の半導体2銘柄の株価はいずれも2026年初来で1桁台の上昇にとどまっており、同期間に86%急騰しているフィラデルフィア半導体株指数を大幅にアンダーパフォームしています。

両銘柄の低調なパフォーマンスの要因の1つは、株価の割高感と思われます。ブロードコムはPER(株価収益率)で61倍、PSR(株価売上高倍率)で24倍と高い水準で取引されています。一方、エヌビディア株はPERで30倍と、ブロードコムよりも大幅に低く、割安感もありますが、PSRで見ると18.6倍と依然として高い水準です。

クアルコム[QCOM]が今後3年間でエヌビディアやブロードコムをアウトパフォームする可能性

一方で、推論に特化したチップにより、AIチップ市場で存在感を高めつつある企業があります。それがクアルコム[QCOM]です。同社の株価は現時点で、実に魅力的なバリュエーションで取引されています。なぜクアルコムがAI推論の時代における最大の勝者の一つとなり、今後3年間でエヌビディアやブロードコムをアウトパフォームする可能性があるのか、その理由を見ていきましょう。

クアルコムの売り上げを担う2つの事業部門

クアルコムは現在、スマートフォン、自動車、およびモノのインターネット(IoT)向けチップの販売で売上を得ています。これら3つの最終市場は、同社の半導体部門である「クアルコムCDMAテクノロジーズ(QCT)」に含まれます。

一方で、「クアルコム・テクノロジー・ライセンシング(QTL)」というもう一つの事業部門もあります。こちらは、同社の知的財産(IP)を利用してワイヤレス製品の設計・製造を行っている顧客からライセンスフィーとロイヤルティーを徴収しています。

クアルコムの中核を担っているのはQCT部門で、2026年度第2四半期(1-3月期)の売上高の86%を生み出しました。しかし、主にスマートフォン市場の低迷により、同四半期のQCT部門の売上高は前年同期比4%減の91億ドルとなりました。その結果、同四半期のクアルコムの総売上高は同2%減の1,06億ドルとなりました。

スマートフォン市場は少なくとも2027年まで、メモリ供給不足と部品コスト高騰による制約を受け続けるとみられます。しかし、データセンターやエッジ・アプリケーションにおけるAIワークロードの実行に使用されるチップへの需要は健全なペースで拡大する見通しです。クアルコムはしばらく前から同市場への参入を目指してきましたが、同社からの最新情報から見る限り、ようやく突破口を開いた可能性があります。

AIがクアルコムのデータセンター事業売上高を大きく押し上げる見通し

クアルコムは、最近開催した2026年次投資家説明会で、データセンター事業の売上高が2029年度までに少なくとも150億ドルに達するとの見通しを明らかにしました。これは、急成長する同分野へ参入したばかりの企業としては、見事なスタートと言えます。同社は、データセンター事業者の総保有コスト(TCO)の低減を目的とする、カスタムAIプロセッサや推論に特化したチップを提供する見通しです。さらに同社は、AIチップを毎年アップグレードしていく方針も示しています。

クアルコムは、液冷ラックスケールサーバー、カスタムプロセッサ、接続ソリューション、特定用途向けデータセンターCPU(中央演算処理装置)、高帯域幅メモリなどの幅広いAIシステム製品群を顧客に提供する準備が整っています。

メタ・プラットフォームズ[META]との大型契約が示すクアルコムの成長ポテンシャル

注目すべき点は、クアルコムは既にテック大手のメタ・プラットフォームズ[META](以下、メタ)という有力顧客を獲得していることです。メタは、2026年から同社のサーバー群にクアルコムのサーバーCPU「Dragonfly C1000」を採用する予定です。さらに重要な点として、クアルコムとメタは複数年・複数世代にわたる契約を締結しており、これはクアルコムにとって安定的かつ長期的な収益源となる可能性があります。

クアルコムのクリスティアーノ・アモンCEOは、同社のAIチップの顧客はメタだけではないと示唆し、同社が「高性能・低電力コンピューティングをデータセンターにもたらし、有力顧客と複数年・複数世代にわたる契約を締結している」と述べています。従って、クアルコムは今後3年間でのデータセンター事業の売上成長目標を十分に達成できる状況にあるとみられ、それが同社の成長を大きく加速させる可能性があります。

利益成長の力強い加速がクアルコムの株価上昇を後押し

クアルコムは、2029年度の株価収益率(EPS)が18.00ドルを超えると見込んでいます。一方、2026年度のEPSは前年比10%減の10.80ドルとなる見通しです。従って、同社のEPSは今後3年間で年率18.5%のペースで増加する可能性があり、これは十分に達成可能だと思われます。

実際に2029年度にEPSが18.00ドルに達し、その時点で同社株がPER26.3倍(NASDAQ100指数の予想PERと同水準)で取引されていると仮定すると、株価は473ドルに上昇する可能性があります。これは現水準から150%の上値余地を意味し、投資家は本格上昇の前にこのAI関連株への投資を検討する価値があると思われます。

さらに、執筆時点でクアルコムは予想PERでわずか17倍、PSR4.6倍で取引されています。従って、同社の成長率が高まれば、市場は(NASDAQ100よりも高い)プレミアム・バリュエーションで評価される可能性があり、その場合は上記の想定よりも大きな株価上昇余地が生まれる可能性もあるでしょう。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Harsh Chauhanは、記載されているどの銘柄の株式も保有していません。モトリーフール米国本社は、ブロードコム、メタ・プラットフォームズ、エヌビディア、およびクアルコムの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示ポリシーを定めています。