モトリーフール米国本社 – 2026年5月10日 投稿記事より

ホルムズ海峡の封鎖によってヘリウムの供給が低下、半導体製造にも影響

2026年2月28日にイランによるホルムズ海峡の封鎖の影響を受け、世界最大のヘリウム生産拠点であるカタールのラス・ラファンにある設備が3月初旬から停止しています。これによって、世界のヘリウム市場は総供給量の約30%にアクセスできない状況が続いています。半導体技術者が既に認識していた「超高純度ヘリウムを大規模に代替できる現実的な手段は存在しない」という事実について、信用格付け会社ムーディーズ[MCO]が改めて4月に把握したようです。

ヘリウムガスは半導体を製造する複数の工程で不可欠な存在となっています。在庫は約6ヶ月分しかなく、実際に半導体を製造している企業はそのタイムリミットと戦っています。

サプライチェーンに依存しないソフトウェア・プラットフォーム企業2選

今、AI関連企業への投資を検討している投資家にとって、このサプライチェーン問題に対する備えと対策が重要でしょう。今回は製品が純粋なソフトウェアで成り立っている企業に注目します。

1.データドッグ[DDOG]の最も安定した収益基盤とは

データドッグの株価が急騰の背景

2026年5月7日に2026年第1四半期決算を発表したデータドッグの株価は取引時間中に約30%急騰しました。1日の上げ幅としては同社史上最大となりました。売上高は前年同期比32%増の10億ドルに達し、四半期ベースで初めて10億ドルの大台を突破しました。非米国会計基準(GAAP)ベースの1株当たり利益(EPS)は約30%増の0.60ドルとなり、フリーキャッシュフローは2億8,900万ドルに上りました。同社は2026年通期見通しを上方修正しました。

しかし、本当に重要なのは、見出しの数字そのものではなく、その裏にある数字です。データドッグは現在、年間経常収益(ARR)が10万ドルを超える顧客を約4,550社抱えています。この顧客層は、同社の最も安定した収益基盤であり、その数は前年比で大幅に増加しました。これらの顧客企業はAIやクラウド・インフラを保有し、システムを監視する上で収集される3つの主要データ、すなわちログ(文章)、トレース(追跡データ)、メトリクス(数値)を大量に生成するため、専用の「クラウド監視プラットフォーム」を必要としています。

「出荷されるのはコードだけ」AI時代に拡大するデータドッグの成長余地

データドッグは、ホルムズ情勢に依存していません。同社の製品は純粋なソフトウェアだけです。製品はクラウド上で提供される監視プラットフォームであり、ブラウザや接続点(API)を通じてAIワークロードやインフラ、アプリケーションを監視しています。物理的な製造工程も、半導体の組み立ても、産業用ガスのいずれも、同社のコストとは無縁です。顧客がデータドッグを導入する時に実際に「出荷」されるのはコードだけなのです。

2026年第1四半期に見られた変化は、AIワークロードやグラフィック処理装置(GPU)クラスター、大規模言語モデル(LLM)の推論パイプライン、エージェント型ワークフローが、データドッグの収益事業として頭角を表し始めたことです。

同社が同四半期に投入したGPU監視製品は、顧客のAI開発チームにコストと性能を目に見える形で提供するものです。これは、2年前には存在しませんでしたが、今や本格的にAIを導入するのに欠かせない機能となっています。AIの本格的な運用が増えれば増えるほど、データドッグの獲得可能市場(TAM)は、ホルムズ情勢に関係なく拡大するでしょう。

2. 分散型の高速環境を監視するプラットフォームを開発したクラウドストライク[CRWD]

AIを対象に開発されたサイバーセキュリティ・エンジンが主力商品

データドッグと同様に、クラウドストライクも物理的な製品を何も製造していません。同社の主力製品は「ファルコン・プラットフォーム」という、最初からAIを対象に開発されたサイバーセキュリティ・エンジンで、エンドポイントの挙動、システムに対して脅威となる情報(インテリジェンス)、および認証情報をリアルタイムで監視します。ビジネスモデルはサブスクリプション方式で、その更新率は98%という高さを誇っています。クラウドストライクの売上原価に「ホルムズ海峡」という言葉は見当たりません。

2026年1月31日に発表された2026年度第4四半期決算では、年間経常収益が前年同期比24%増の52億5,000万ドル、総売上高は同23%増の13億1,000万ドルとなりました。クラウドストライクについて見過ごされている重要な視点は、AIによって同社の重要性が低下するどころか、むしろ高まっているという点です。企業内に導入されるAIエージェントは全て新たな攻撃対象となり得ます。LLMと企業データベースの間で行われるAPI経由のやり取りは全て、新たな攻撃経路になるのです。クラウドストライクの「ファルコン・プラットフォーム」は、まさにAI が大規模導入されることで生まれる、分散型の高速環境を監視するために開発されました。

クラウドストライクは2027年度のガイダンスで売上高を58億6,000万~59億2,000万ドルと、前年度比13%前後の増収を見込んでいます。これは、過去8四半期連続でガイダンスを上回り、経営陣による意図的に保守的な数字と言えるでしょう。

2024年に発生したソフトウェア更新時の障害の再発がリスク

一方で、クラウドストライクにとってのリスクは、従来と変わっていません。2024年に発生したソフトウェア更新時の障害は、一部の顧客企業に強い不信感を残しました。そして競合他社は、その隙を利用して攻勢を強めています。

クラウドストライクにおいて、ネットの新規年間経常収益の回復は着実に進んでいますが、過去の傷跡はまだ完全には消えていません。現在の株価で投資する投資家は2027年度に20%超の成長軌道に戻るという、まだ確認されていないシナリオを織り込んでいると考えられます。

モニタリング・セキュリティ・監視などを提供するソフトウェア企業に必要なこと

今回のヘリウムのサプライチェーン危機で明らかになったのは、市場がこれまで十分に織り込めていなかった事実、すなわち、モニタリング・セキュリティ・監視など一連のAIインテリジェンスを提供するソフトウェア企業は、成長のためにヘリウムを全く必要としないということです。彼らに必要なのは、ますます複雑化していくAI導入環境を抱える顧客だけなのです。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Micah Zimmermanは記載されたどの銘柄の株式も保有していません。モトリーフール米国本社は、クラウドストライク、データドッグ、ムーディーズの株式を保有し、推奨しています。モトリーフール米国本社は、情報開示方針を定めています。