メタ・プラットフォームズ[META]が牽引、数兆円規模で動くAI半導体の調達競争

米メタ・プラットフォームズ[META]は4月14日、米半導体大手ブロードコム[AVGO]と人工知能(AI)向け半導体の共同開発で提携を広げると発表した。4月15日付の日本経済新聞の記事「メタ、ブロードコムからAI半導体の調達拡大2029年まで提携延長」によると、自社のAIサービス専用半導体の設計支援を2029年まで延長し、ブロードコムから、データセンターの電力容量に換算して、1ギガ(ギガは10億)ワット分の半導体を新たに調達予定。契約額は開示していないが、数兆円に上る見通しのようだ。

メタ・プラットフォームズは2月に米アドバンスト・マイクロ・デバイシズ[AMD]と5年間で最大6ギガワット相当の半導体の調達契約を結んだ。3月には英半導体設計大手アーム・ホールディングス[ARM]からAIデータセンター用のCPU(中央演算処理装置)を購入することも明らかにしている。2026年12月期は最大1,350億ドルを設備投資に充てる計画で、AIインフラ投資の拡大と合わせて半導体の調達先を広げている。

「一世代に一度の変革」、第3次AIブームとAI半導体チップの必要性

AI技術の向上と同時にAIの性能を最大限に発揮できるAI半導体チップの開発競争が加速している。AI半導体チップとは、AIの演算処理を高速化するために設計された専用の半導体チップである。AIが使われる範囲が拡大すると同時に、AIの学習に必要な計算量は飛躍的に増加しており、汎用プロセッサだけでは処理が追いつかなくなっている。膨大な量のデータを高速に処理することができる、高性能で消費電力を抑えた専用チップを求める需要が高まっている。

半導体集積回路(=半導体チップ)が発明されたのは1958年頃だ。それから60年余り、半導体チップは約2年で性能が2倍になるという「ムーアの法則」と共に進化を遂げてきた。当時開発されたチップには約60個のトランジスタしか搭載されていなかったが、微細化、小型化が進み、現在のチップは数十億個のトランジスタをエッチングすることができるようになった。今、私たちがスマートフォンという小型コンピューターをポケットに入れて持ち運べるようになったのは半導体の性能進化が背景にある。

世界は現在、3度目となるAIブームに湧いている。AI技術は1950年代に1つの分野として確立されて以来、流行と衰退の波を繰り返してきた。過去2回のブームの時はコンピューターがソフトウェアを動かすのに十分な性能を持っていなかったが、今では大量のデータと非常に強力なコンピューターによって、AI技術を実現することができるようになった。

アマゾン・ドットコム[AMZN]のアンディ・ジャシーCEO(最高経営責任者)は4月8日に公開した株主への手紙の中で、「AIは一世代に一度の変革機会」であり、電力やインターネットに匹敵する、あるいはそれ以上のスピードで社会を変えるものだと位置付けている。ジャシーは、ほぼすべての顧客体験がAIによって再構築されると述べており、AIは単なる機能追加ではなく、企業活動の前提そのものを変える基盤技術と捉えている。

「なければ作る」、イーロン・マスク氏の米国版TSMC構想

起業家イーロン・マスク氏は3月、自社使用の半導体を量産する「テラファブ」計画を明らかにした。テスラ[TSLA]と宇宙開発の米スペースXの共同事業として、米南部テキサス州に工場を設け、ロジック半導体やデータを記録する半導体メモリーなど異なる種類を一つの拠点で効率生産するとしている。台湾に代わり、米国でAI用最先端半導体を生産する「米国版TSMC」を狙う。テラファブを巡っては、最終的に最大で13兆ドルの設備投資が必要との試算もある。

3月26日付の日本経済新聞の記事「マスク氏が『米国版TSMC』構想、総投資2000兆円試算 AI半導体で賭け」によると、テラファブは名の通り、消費電力換算で1テラ(テラは1兆)ワット分のAI半導体を1年でつくれる工場を目指しているという。マスク氏によれば、現在の世界の供給力の50倍だ。構想発表においてマスク氏は、「テラファブを自らつくるか、半導体を入手できないかだ。チップが必要なので自分でつくる」と述べた。AIに使われる半導体は世界で不足し、争奪戦になっていることが背景だ。

インテル[INTC]は国策巨大ファウンドリ企業となるのか?

テラファブは受託生産ではなく全量をテスラやスペースX、xAIと自らの企業群で使う点が半導体製造世界最大手TSMC(台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング)[TSM]と異なる。さらに、マスク氏は「ロジック、メモリー、パッケージを一貫で行う」といい、AI向けに必要な複数種類の半導体や製造技術を全て内製化すると主張した。半導体の量産立ち上げには専門人材が必要だ。

このテラファブ計画に米半導体大手インテル[INTC]が参画することが明らかになった。トランプ政権が株式の1割を保有する国策企業でもあるインテルとの協力は、先端品をつくる自国企業の育成という米政府の方針にも一致している。

インテルのリップブー・タンCEO(最高経営責任者)は4月7日、マスク氏が運営するソーシャル・ネットワーキング・サービスXに「スペースx、xAI、テスラとともにテラファブプロジェクトに参加できることを誇りに思う。これにより、シリコンファブ技術の再構築を支援する」と投稿した。

インテルの株価が一時70ドル台にのせ5年前の株価水準を上回った。ハイテク株を中心に多くの株価が年初来で調整する一方、インテルは年初来から約7割値上がりしている。インテル株にとっての好材料はテラファブ計画への参画だけではない。

4月9日にはアルファベット[GOOGL]傘下のグーグルと既存のパートナーシップをさらに深化させ、次世代AIおよびクラウドインフラを推進するための複数年にわたる協業を発表した。協業の具体的な規模などについては公表されていないが、よりAIシステムが高度化する場合、GPU(画像処理半導体)のようなアクセラレーターだけではなく、インテルが得意とするCPU(中央演算処理装置)を含めたシステム設計が必要だ。

AIブームの恩恵がインテルにも波及してきたようだ。高機能AIサーバーにおいて、GPU8基に対してCPU2基の構成が一般的であり、インテルのCPUである「Xeon」プロセッサの需要が急増している。インテルが公開している資料によると、CPUの性能や電力効率が大幅に向上しており、CPUベースでAIインフラストラクチャーを構築することも現実的な選択肢となっているという。

【図表】インテルの売上高と最終損益の推移
出所:決算資料より筆者作成

ただし、業績はまだ厳しい状況から抜け出せていない。2026年第1四半期は前年同期比で減収が見込まれている。ファウンドリ部門では大規模人員削減を実施しており、熟練労働者の流出や製造現場の士気低下、および競争の激しい市場での実行リスクも指摘されている。

インテルは単なる「チップメーカー」から、米国主導の半導体供給網を支える「国策巨大ファウンドリ企業」へと変貌を遂げようとしている。現在の株価上昇がさらなる成長の始まりなのか、それとも期待先行のピークとなるのか、今後の四半期決算の数値を確認しながら見極めていきたい。

石原順の注目5銘柄

ブロードコム[AVGO]
出所:マネックス証券ウェブサイト(2026年4月20日時点)
メタ・プラットフォームズ[META]
出所:マネックス証券ウェブサイト(2026年4月20日時点)
テスラ[TSLA]
出所:マネックス証券ウェブサイト(2026年4月20日時点)
インテル[INTC]
出所:マネックス証券ウェブサイト(2026年4月20日時点)
アマゾン・ドットコム[AMZN]
出所:マネックス証券ウェブサイト(2026年4月20日時点)