イラン攻撃前の水準まで戻ってきたユーロ/米ドル

米国等によるイラン攻撃が2月末に始まると、ユーロ/米ドルは1.18米ドルから一時は1.14米ドル割れ近くまで大きく下落した。これを「有事の米ドル買い」とする説明も多かった。しかし、基本的には原油などのエネルギー供給リスクに弱いユーロ圏通貨が売られた一方、「世界一の産油国」である米国の通貨が選好された結果だと考えられた。

原油価格は、一時に比べれば少し下がったものの、依然としてイラン攻撃が始まる前の水準を大きく上回っている。これは原油供給が不足する懸念がなお払しょくされていないことを示しているだろう。しかし、ユーロ/米ドルはイラン攻撃が始まる前の水準までユーロ高・米ドル安に戻してきた(図表1参照)。ではそれはなぜなのか。

【図表1】ユーロ/米ドルとWTI(2026年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

金利差変化に素直にユーロ買い反応へ変わる

ユーロ/米ドルが一時1.14米ドル台まで下落した動きは、独米金利差(ユーロ劣位・米ドル優位)の縮小からかい離したものだった。これに対してその後のユーロ高・米ドル安は、独米金利差の縮小に追随するものだった(図表2参照)。ではなぜ、ユーロ/米ドルは金利差に素直に反応するようになったのか。

【図表2】ユーロ/米ドルと独米金利差(2026年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋のユーロ・ポジションは、イラン攻撃が始まる前までは比較的大幅なユーロ買い越し(米ドル売り越し)となっていたが、その後は急縮小に向かった(図表3参照)。すでに見てきたように、エネルギー供給リスクに弱いユーロを大きく買い越している状況の見直しを急いだということだったのではないか。

【図表3】CFTC統計の投機筋のユーロ・ポジション(2025年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

「有事の米ドル買い」での説明には無理があるユーロ買いへの転換

そうした中で、3月末にはユーロ買いポジションはほぼ消滅した。まさにこの頃からユーロは、金利差変化に素直に反応するように反発に向かい出した。以上を踏まえると、イラン攻撃後にユーロ/米ドルが当初急落した主因は、エネルギー供給リスクに弱いユーロ圏の通貨が大きく買われた状況を是正するためのユーロ売りの影響が大きかったと考えられる。そうした調整が一巡すると、金利差変化に比較的素直に反応する形でユーロは買い戻されたのではないか。

そうであれば、イラン攻撃後のユーロ安・米ドル高などを「有事の米ドル買い」と説明するのはやはり違うように感じられる。この場合の「有事」の主役がエネルギー供給不安であるなら、それはまだ残っている。しかし、当初はユーロ売り・米ドル買いが広がり、その後にユーロ買い・米ドル売りに変わったことをうまく説明できるのは、「エネルギー供給リスクに弱いユーロ圏の通貨が大きく買われた状況の見直し」と、その調整が一巡したことだろう。

ユーロと異なり反発が鈍い円=投機円売り拡大の影響も

米ドル/円は、イラン攻撃が始まると156円程度から160円まで米ドル高・円安が広がった。ユーロ/米ドルのように、イラン攻撃が始まる前の水準まで戻るなら156円ということになるが、足下ではそれよりかなり米ドル高・円安での推移が続いている。見方によっては、ユーロ/米ドルなどとは対照的にエネルギー供給懸念が残る中で、そのリスクに弱い日本の通貨が売られる状況が続いているとも言えそうだ(図表4参照)。

【図表4】米ドル/円とWTI(2026年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

投機筋の円ポジションは、イラン攻撃開始後売り越し(米ドル買い越し)が大きく拡大した(図表5参照)。すでに見てきたユーロのケースでは、エネルギー供給リスクに弱いユーロ圏通貨が大きく買われた状況の是正として、ユーロ売りが拡大した。これとは異なり、同じようにエネルギー供給リスクに弱い日本の通貨が積極的に売られた結果だった。

【図表5】米ドル/円とCFTC統計の投機筋の円ポジション(2025年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

こうした中で、4月7日時点の円売り越しは9.3万枚に拡大した。これは主要通貨の中では、対米ドルで最大の売り越しである。その意味では、ユーロなどと比べて円の反発が鈍い一因は投機筋の円売りの影響がありそうだ。

この投機筋の円売りポジションの損益分岐点の1つの目安とされる米ドル/円の120日MA(移動平均線)は4月15日現在で156円半ばである。このため、この先円売りポジションの含み益が縮小し、さらには含み損に転落する可能性が出てくるようなら、円売りポジションの処分に伴う円買い戻しが米ドル安・円高へ戻す一因となる可能性も注目される。