トランプ政権発足を境に円の売買戦略が大転換したヘッジF
トランプ政権発足以前、2024年7月に米ドル高・円安は161円まで広がった。この局面でヘッジFの取引を反映しているCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円売り越し(米ドル買い越し)は約18万枚と、2007年に記録した過去最高にほぼ肩を並べるほどに拡大した(図表1参照)。つまり、161円という1986年以来、約38年ぶりの「歴史的円安」は、ヘッジFなどの投機筋の円売りが主導した構図となっていたわけだ。
ところが、その投機筋の円売り姿勢が、2025年1月のトランプ政権発足を境に大きく変わった。2024年7月の161円から一時139円まで米ドル安・円高に戻したものの、その後2025年1月のトランプ政権発足前には、再び158円まで米ドル高・円安となった。ここで投機筋の円売り越し拡大はわずか3万枚程度にとどまった。
円売り慎重の一方で円買いを積極化=トランプ政権の通貨政策に連携?
その後日米金利差(米ドル優位・円劣位)縮小に沿う形で米ドル安・円高に向かうと、投機筋は円の買い越し拡大に向かった。2025年4月、「関税ショック」の世界的株暴落の中で米ドル安・円高も139円まで進んだ。ここで投機筋の円買い越しは、2016年に記録したそれまでの最高の7万枚をはるかに上回る17万枚まで拡大した(図表2参照)。2024年7月の「歴史的円安」局面とは正反対に、ここでは投機円買いが円高の主導役になった。
このようなトランプ政権発足以降、円売りを自制する一方で円買いを積極化する投機筋の売買戦略の大転換は、結果としてトランプ大統領の円安に批判的な考え方と一致したものだった。このため、ヘッジF業界出身のベッセント財務長官などを通じ、ヘッジFがトランプ政権の通貨政策の「代行者」になっている可能性を感じさせるものでもあった。
円安再燃でも円売り抑制=米「レートチェック」も知っていた?
2025年10月、高市政権が誕生すると、再び150円を大きく超えて米ドル高・円安が広がった。しかし、トランプ政権発足以前に比べると、投機筋の円売り越しの拡大は1月の4万枚程度にとどまった。それは、2024年に円安が160円に向かう中で最高で18万枚近くまで円売り越しが拡大したことを考えると、なお円売り抑制に変わりないようにも感じられた。
そうした中で2026年1月23日、米通貨当局は米ドル高・円安が160円に接近した局面で、為替介入の前段階と理解されている「レートチェック」を実施し、円安は一時的に円高へ大きく反転した。こうしたことから、ヘッジFがトランプ政権誕生以前に比べて円売りに慎重な姿勢を続けたのは、トランプ政権の通貨政策により160円を超えて大きく円安にならないことを知っていたからのようにも見えた。
同じ160円でも2024年7月の半分以下=円売り越し
米ドル高・円安は3月末に、2024年7月以来の160円台に戻ってきた。ここで、ヘッジFの取引を反映する投機筋の円売り越しは、トランプ政権発足以降の最高を更新する7万枚まで拡大した(図表3参照)。ただそれは、2024年7月に18万枚近くまで円売り越しが拡大したことに比べると、まだ半分以下に過ぎない。
ヘッジFの円売り抑制姿勢が続いているなら、それはトランプ政権の通貨政策の影響により160円を大きく超える円安が広がらないとの判断によるものか、大いに注目されるところだろう。
